確定申告はいくらから必要?
「確定申告っていくら稼いだら必要になるの?」という疑問への答えは、売上(収入)ではなく所得=売上から経費を引いた残りで決まります。さらに令和7年分(2025年分)から基礎控除の金額が変わったため、長く目安とされてきた「所得48万円以下なら申告不要」は古い情報になりました。この記事では、本業がフリーランス・個人事業主の人向けに、申告が必要になるラインの考え方を最新の制度で整理します。会社員の副業側の話(20万円ルール)は副業の確定申告は20万円からで別に解説しています。
申告が必要になる条件は「税額が出るかどうか」
所得税のルールでは、その年の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超え、その超える部分に対する税額が配当控除などを上回る人に確定申告の義務があります(国税庁タックスアンサーNo.2020)。かみくだくと「計算してみて納める所得税が出る人は申告が必要」ということです。判定は次の順番で行います。
- 所得金額を計算する: 1年間の売上から必要経費を引く(事業所得)。複数の所得があれば合計する
- 所得控除を引く: 基礎控除・社会保険料控除(国民年金・国保)・生命保険料控除・扶養控除など
- 残った金額(課税所得)に税率を掛けて税額が出るか確認する: 税額が出れば申告義務あり、所得が控除の範囲に収まって税額ゼロなら申告義務なし
つまり「いくらから」の境界線は人によって違います。扶養家族の有無や払っている保険料で所得控除の合計が変わるためです。ただし誰でも必ず使える基礎控除があるので、「最低でもここまでは申告不要」というラインは引けます。それが次の表です。
目安は「所得95万円」|令和7年分から基礎控除が変わった
| 納税者本人の合計所得金額 | 令和6年分以前 | 令和7・8年分 | 令和9年分以後 |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 | 95万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 48万円 | 88万円 | 58万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 48万円 | 68万円 | 58万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 48万円 | 63万円 | 58万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 48万円 | 58万円 | 58万円 |
合計所得金額が2,350万円を超えると基礎控除は段階的に縮小し(48万円→32万円→16万円)、2,500万円超でゼロになります。フリーランスの申告実務で重要なのは表の1行目で、合計所得が132万円以下の人の基礎控除は令和7・8年分は95万円です。所得が95万円以下なら、ほかの控除を1円も使わなくても基礎控除だけで課税所得がゼロになるため、「所得95万円以下なら所得税の申告義務は生じない」が新しい目安になります(令和6年分以前はこのラインが48万円でした)。
たとえば売上140万円・経費50万円なら所得は90万円で、95万円以下なので申告義務は生じない計算です。所得が95万円を少し超えても、自分で払った国民年金や国民健康保険の保険料は全額が社会保険料控除になるため、控除を積み上げると税額ゼロ=申告義務なしに収まるケースもあります。自分の所得と税金の全体像は手取りシミュレーターで試算できます。
申告義務がなくても、申告したほうがよい5つのケース
「義務がない=申告しないのが得」とは限りません。むしろフリーランスの場合、所得が少ない年ほど申告するメリットが大きいことがあります。
- 源泉徴収された報酬がある: 原稿料やデザイン料などから引かれた10.21%は納め過ぎになっていることが多く、申告すると還付されます。仕組みは源泉徴収の還付の解説へ。還付だけの申告(還付申告)は翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁タックスアンサーNo.2030)
- 事業が赤字だった(青色申告): 申告して純損失を繰り越せば、翌年以降3年間の黒字と相殺できます。やり方は赤字の繰越控除を参照
- 青色申告特別控除を受けたい: 65万円・55万円控除は期限内申告が要件のため、申告しなければ使えません
- 国民健康保険料の軽減を受けたい: 軽減判定には世帯の所得情報が必要です。所得の申告がないと軽減が適用されないことがあります(国保を安くする方法参照)
- 所得の証明書が必要になる予定がある: 賃貸契約・住宅ローン・保育料の算定などで課税(非課税)証明書を求められたとき、申告していないと「所得不明」で発行に支障が出ることがあります(収入証明の取り方参照)
所得税が申告不要でも「住民税」は基準が別
住民税(市区町村民税・都道府県民税)が非課税になる所得のラインは、所得税とは別に決まっています。東京23区の場合、扶養親族がいない単身者は前年の合計所得金額45万円以下で均等割・所得割とも非課税、同一生計配偶者や扶養親族がいる場合は「35万円×(本人+配偶者+扶養親族の人数)+31万円以下」で均等割が非課税です(東京都主税局。23区外は基準が異なる場合があります)。つまり所得が45万円超〜95万円以下だと、所得税はかからないのに住民税はかかるゾーンが生まれます。
所得税の確定申告をすればそのデータが自治体に共有されるため住民税の申告は不要ですが、確定申告をしない場合は、住民税の申告を自治体から求められることがあります。住民税の申告データは国保料の計算や非課税証明書の発行にも使われるので、収入が少ない年でも「何も申告しない」のは避けたほうが無難です。6月に届く通知の見方は住民税・国保の通知書が届いたらで解説しています。
「申告するかも」に備えて、帳簿だけは付けておく
申告が必要かどうかの判定には、結局のところ1年分の売上と経費の集計=帳簿が必要です。しかも事業所得のある人は、申告するかどうかにかかわらず記帳と帳簿の保存が義務づけられています(詳しくは帳簿の付け方)。日々の取引をクラウド会計ソフトに入れておけば、所得がいくらになりそうかが常に見えるので、「申告が必要なラインを超えたかどうか」を年末に慌てて計算する必要がなくなります。無料プランや初年度無料のソフトもあるため、所得が少ないうちから使い始めても負担はほとんどありません。
フリーランスの手取りシミュレーター売上と経費を入れると所得税・住民税・国保・年金を差し引いた手取りを試算。申告ラインの確認にも
よくある質問
売上(収入)がいくらから確定申告が必要ですか?
売上ではなく所得(売上−必要経費)で判定します。所得の合計が所得控除の合計を超えて納める税額が出る場合に申告義務が生じます(国税庁タックスアンサーNo.2020)。誰でも使える基礎控除が令和7・8年分は95万円(合計所得132万円以下の場合)あるため、所得95万円以下なら申告義務は生じないのが目安です。売上が大きくても経費を引いた所得がこのラインに収まれば義務はありません。
「所得48万円以下なら申告不要」と聞きましたが違うのですか?
48万円は令和6年分以前の基礎控除の金額です。令和7年度税制改正で基礎控除が見直され、令和7・8年分は合計所得132万円以下の人で95万円になりました(国税庁タックスアンサーNo.1199)。古い記事や書籍の「48万円」を今の判定に使わないよう注意してください。
所得税の申告が不要なら、住民税の申告もしなくていいですか?
別の話です。住民税の非課税基準は所得税より低く、東京23区の単身者では合計所得45万円以下が目安です(東京都主税局。自治体により異なる場合があります)。所得税の確定申告をしない場合、住民税の申告を自治体から求められることがあります。住民税の申告データは国保料の計算や非課税証明書の発行にも使われるため、収入が少ない年でも所得の申告はしておくのが無難です。
申告義務はないのに報酬から源泉徴収されていた場合はどうなりますか?
確定申告(還付申告)をすると納め過ぎ分が戻ってくる可能性が高いです。所得が基礎控除以下で税額がゼロなら、源泉徴収された10.21%は全額還付の計算になります。還付申告は確定申告期間に関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。
赤字なら申告しなくていいですか?
義務はありませんが、青色申告をしている場合は申告しないと損です。純損失の繰越控除を使えば、赤字を翌年以降3年間の黒字と相殺して将来の税金を減らせます。この繰越には損失が出た年の申告(損失申告)が必要です。白色申告では繰り越せる損失が限られるため、赤字が見込まれる年こそ青色申告の価値が大きくなります。