国民健康保険を安くする方法まとめ|軽減・国保組合・世帯分離の注意
国民健康保険(国保)は労使折半がなく、フリーランスにとって重い固定費です。6月ごろに届く保険料の通知を見て「高い」と感じたら、まず確認したいのが使えるはずの軽減制度を取りこぼしていないかです。この記事では、国保を安くする方法を「自動で効くもの」「申請が要るもの」「仕組みごと変えるもの」に分けて整理します。保険料の計算そのものは国民健康保険料の計算方法を参照してください。
国保を安くする方法の全体像
国保料は「前年の所得をもとにした所得割」と「人数に応じた均等割」で決まります。安くする方向は大きく次の3つです。下にいくほど効果が大きい一方、手間や制約も増えます。
| 方向性 | 具体例 | 効きやすい人 |
|---|---|---|
| 軽減・減免を取りこぼさない | 低所得世帯の軽減、産前産後、非自発的失業 | 所得が低い年・出産・離職直後の人 |
| 所得を正しく下げる | 青色申告特別控除、経費の適正計上、各種所得控除 | 確定申告の精度を上げたい人 |
| 加入する制度を変える | 国保組合、任意継続、法人化 | 業種が合う人・退職直後・所得が高い人 |
①低所得世帯の軽減(7割・5割・2割)|申請不要だが申告は必須
世帯の所得が一定以下だと、均等割が7割・5割・2割自動で軽減されます。申請は不要ですが、世帯の全員が所得を申告していることが条件です。所得がゼロの人も「住民税の申告(0円申告)」をしておかないと軽減判定ができず、損をすることがあります。
| 軽減割合 | 世帯の総所得金額等がこの額以下 |
|---|---|
| 7割軽減 | 43万円 + 10万円×(給与所得者等の数−1) |
| 5割軽減 | 43万円 + 31万円×被保険者数 + 10万円×(給与所得者等の数−1) |
| 2割軽減 | 43万円 + 57万円×被保険者数 + 10万円×(給与所得者等の数−1) |
- 被保険者数: 国保に加入している世帯の人数(軽減判定では特定の旧国保加入者を含めて数える自治体もあります)
- 給与所得者等の数: 給与収入55万円超の人や、公的年金等の収入が一定額以上の人の数。2人以上いる世帯だけ「10万円×(人数−1)」の加算が効きます
- 総所得金額等: 事業所得なら「売上−経費−青色申告特別控除」。軽減判定では総所得金額等を使うため、所得を正しく下げることが軽減のハードルにも直結します
②産前産後の免除|出産する本人が対象(令和6年1月〜)
令和6年1月から、出産する国保被保険者の保険料が一定期間免除されます。所得にかかわらず使える制度なので、対象なら必ず届け出ましょう。
- 対象: 妊娠85日(4か月)以上の出産をした(する)被保険者。死産・流産・早産・人工妊娠中絶も含まれます
- 免除される期間: 出産予定月(出産月)の前月から翌々月までの4か月分。多胎妊娠は3か月前から翌々月までの6か月分
- 免除される額: その期間にかかる所得割額・均等割額
- 届出の時期: 出産予定日の6か月前から提出でき、出産後の届出も可能です
③非自発的失業の軽減|会社都合で辞めて国保に入った人
会社員から独立した直後で、前職を倒産・解雇・雇止めなど会社都合(非自発的)で離職した場合、国保料が大きく下がる制度があります。前年の給与が高いほど効果が出ます。
- 対象: 65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇等)または特定理由離職者(雇止め等)に該当する人
- 軽減内容: 前年の給与所得を100分の30として所得割を計算します(給与以外の所得は通常どおり)
- 期間: 離職日の翌日から、その翌年度末まで
- 手続き: 雇用保険受給資格者証などの離職理由コードで判定するため、市区町村への申請が必要です
④所得を正しく下げる|青色申告と所得控除
国保料の所得割も軽減判定も「総所得金額等」が基準です。つまり、適正に所得を下げることがそのまま国保料の引き下げと軽減の通りやすさにつながります。脱税ではなく、使える控除を使い切るという発想です。
- 青色申告特別控除(最大65万円): e-Taxまたは電子帳簿保存+複式簿記で最大65万円。所得を直接圧縮します。詳しくは青色申告と白色申告の違い
- 経費の計上もれを防ぐ: 家事按分(家賃・通信費)など、計上できる経費を取りこぼさない。家事按分の割合の決め方も参照
- 所得控除を使う: 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo・小規模企業共済)、国民年金基金などは所得控除になり、国保の所得割の計算基礎を下げます
どのくらい効くかの目安: 青色申告特別控除で総所得金額等が65万円下がると、国保の所得割の計算基礎(総所得金額等から基礎控除43万円を引いた額)も同じだけ減ります。たとえば令和8年度の岡山市(40歳未満)の所得割率は医療分8.15%+後期高齢者支援金分2.95%の合計11.10%なので、65万円 × 11.10% = 約7万2千円/年、国保の所得割が下がる計算です(40〜64歳は介護分2.60%が加わり合計13.70%で約8万9千円/年)。所得割率は自治体で異なりますが、同じ65万円の圧縮は住民税(所得割ほぼ一律10%で約6万5千円)や所得税にも効くため、控除の効果は国保だけにとどまりません。
⑤国保組合に入る|業種が合えば所得が高い人ほど有利になりうる
市区町村の国保のほかに、特定の業種ごとの国民健康保険組合(国保組合)があります。多くは所得に比例しない定額(または所得に緩やかに連動する)保険料で、所得が高いフリーランスほど市区町村国保より安くなる場合があります。
| 国保組合 | 主な対象業種 |
|---|---|
| 文芸美術国民健康保険組合 | デザイナー・イラストレーター・文筆業など(加盟団体への所属が条件) |
| 建設国保(建設国民健康保険組合) | 建設業に従事する人 |
| 医師・歯科医師・薬剤師などの国保組合 | 各士業・専門職 |
- メリット: 所得が増えても保険料が上がりにくい設計が多く、高所得だと市区町村国保より安くなることがあります
- 注意: 加入には対象業種であることや、指定の業界団体への加入が条件になることが多いです。団体の年会費もかかります
- 比較のしかた: いまの市区町村国保の年額と、組合の保険料(+団体年会費)を並べて比べます。所得が低い年は市区町村国保の方が安いこともあります
⑥退職直後なら任意継続と比較|法人化は所得が高い人の選択肢
- 任意継続: 会社の健康保険を退職後最大2年継続できます。退職直後は前年の高い所得で国保料が決まるため、任意継続の方が安いことがあります。退職前後はどちらが安いか必ず試算を
- 法人化: 法人をつくって役員報酬を受け取ると、国保ではなく協会けんぽなどの社会保険になります。一定以上の所得では国保・国民年金より有利になることがありますが、社会保険料の会社負担や手間も増えます。判断材料は法人化の目安を参照
世帯分離は慎重に|安くなるとは限らない
「世帯を分ければ国保が安くなる」という話を見かけますが、そう単純ではありません。世帯分離は本来、生計を別にした実態があるときに行う住民票上の手続きです。保険料目当てだけで行うと、かえって不利になることもあります。
- 軽減はむしろ不利になることがある: 軽減判定は世帯全体の所得で見ます。低所得の人を分離すると、その人の頭割り(均等割)の軽減枠が減り、世帯合計の保険料が増える場合があります
- 賦課限度額(上限)が関係するケースは限定的: 世帯合計の保険料が上限に達している高所得世帯では分離で下がることもありますが、多くの世帯は上限に届きません
- 他の負担が増えることも: 高額療養費の自己負担限度額や各種行政サービスの判定にも影響します。総合的に損得を見る必要があります
やることチェックリスト
- 世帯の全員が所得を申告している(0円でも住民税の申告をする)
- 低所得の年は7割・5割・2割軽減の判定対象になっていないか通知で確認した
- 出産予定・出産があれば産前産後の免除を届け出た
- 前職が会社都合の離職なら非自発的失業の軽減を申請した
- 青色申告特別控除と経費・所得控除を使い切り、所得を適正に下げた
- 業種が合えば国保組合の保険料(+団体年会費)と市区町村国保を比較した
- 退職直後なら任意継続と国保のどちらが安いか試算した
- 世帯分離は窓口で試算してから判断する(安くなるとは限らない)
国保を安くする近道は、奇策よりも「使える軽減を取りこぼさない」「所得を正しく下げる」の積み重ねです。所得が下がれば国保・住民税・所得税のすべてに効きます。まずは手元の所得イメージを手取り計算ツールで把握し、青色申告と経費の精度を上げておくと、保険料の通知が来たときに慌てずに済みます。日々の記帳をクラウド会計ソフトでまとめておくと、複式簿記による青色申告特別控除も受けやすく、所得控除のもれも防ぎやすくなります。
よくある質問
国民健康保険の軽減(7割・5割・2割)は申請が必要ですか?
申請は不要で、所得に応じて自動的に判定されます。ただし世帯の全員が所得を申告していることが条件です。所得がゼロの人も住民税の申告(0円申告)をしておかないと判定できず、軽減を受けられないことがあるため注意してください。
会社を辞めてフリーランスになった1年目に国保を安くできますか?
前職を倒産・解雇・雇止めなど会社都合で離職した場合、雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者に該当すれば、前年の給与所得を100分の30として国保料を計算する軽減が使えます(離職日の翌日からその翌年度末まで)。市区町村への申請が必要です。自己都合退職は対象外です。
国保組合に入れば必ず安くなりますか?
必ずではありません。国保組合は所得に比例しない定額の保険料設計が多く、所得が高い人ほど市区町村国保より安くなる傾向がありますが、所得が低い年は逆のこともあります。加入には対象業種であることや業界団体への加入(年会費)が条件になることが多いので、市区町村国保の年額と組合の保険料+年会費を並べて比較してください。
世帯分離をすると国民健康保険料は下がりますか?
下がるとは限りません。軽減判定は世帯全体の所得で行うため、低所得の人を分離すると軽減枠が減って世帯合計が増える場合があります。上限(賦課限度額)に達している高所得世帯では下がることもありますが、多くの世帯は上限に届きません。窓口で分離後の保険料を試算してもらってから判断するのが安全です。
出産するときに国保料は免除されますか?
令和6年1月から、出産する被保険者は産前産後の保険料が免除されます。出産予定月の前月から翌々月までの4か月分(多胎妊娠は3か月前から6か月分)の所得割・均等割が対象です。妊娠85日以上の出産が対象で、死産・流産なども含まれます。出産予定日の6か月前から届け出られます。