国民健康保険料の計算方法
会社員の健康保険と違って労使折半がないため、フリーランスの国民健康保険(国保)は思った以上に重い負担になります。仕組みを知らないと「想定外の請求が来た」となりがちです。この記事では計算の仕組みと目安額を整理します。
国保の通知が重く感じられるのは、会社員のように勤め先が保険料を分担してくれる仕組みがないことに加え、前年の所得をもとに翌年の保険料が決まるため、収入が落ち着いたころに稼げた年ぶんの請求が届くというずれがあるためです。まずは料率の仕組みと自分の所得に対する目安をつかみ、届く前提で資金を取り分けておくと、通知が来ても落ち着いて対応できます。
会社員から独立した年は、どの所得で試算する?
今年の開業後の売上だけで、今年度の国保を試算しないでください。 所得割は前年1月〜12月の所得が基礎になるため、前年の会社員時代の給与所得も対象です。例えば令和8年度(2026年4月〜2027年3月分)は2025年の所得を確認します。退職して現在の収入が減っても、直ちに保険料が下がるとは限りません。
| 確認項目 | 使う数字・注意点 |
|---|---|
| 対象年度 | 保険料の年度と、その算定に使う前年の所得を分ける |
| 前年の給与 | 給与収入そのものや手取り額ではなく、給与所得控除後の給与所得を確認する |
| 前年の事業や他の所得 | 事業所得だけでなく、自治体が示す総所得金額等の対象を確認する |
| 退職金 | 練馬区の総所得金額等には退職所得を含めない。給与所得と区別する |
| 加入する家族・加入期間 | 単身の年間早見表を家族全員や年度途中の加入へそのまま使わず、自治体で試算する |
前年の源泉徴収票・確定申告書などを手元にそろえ、住所地の国保窓口や公式試算で確認しましょう。給与所得は給与収入から給与所得控除を差し引くのが基本で、該当する所得金額調整控除等にも注意が必要です。練馬区の計算方法・公式試算への入口は練馬区向けなので、他の自治体の料率へ転用しないでください。納付が難しい場合は、減免の対象になるか住所地へ相談できますが、退職だけで自動的に減免されるとは限りません。出典:練馬区「国民健康保険料の計算方法(令和8年度)」「給与所得」、大阪市「国民健康保険料に関するQ&A」Q5(2026年9月26日確認)。
国保の保険料は4つの部分でできている
| 区分 | 対象 | 所得割(目安) | 均等割(目安) | 上限(賦課限度額) |
|---|---|---|---|---|
| 医療分 | 全員 | 7.51% | 47,600円 | 67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 全員 | 2.80% | 17,600円 | 26万円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 全員(令和8年度〜) | 0.27% | 1,873円 | 3万円 |
| 介護分 | 40〜64歳のみ | 2.43% | 17,800円 | 17万円 |
料率は東京23区(令和8年度)の例で、自治体によって大きく異なります(同じ所得でも年数万円単位の差が出ます)。お住まいの市区町村のサイトで「国民健康保険料 計算」と検索して確認してください。
計算式
- 算定基礎額 = 前年の総所得金額(事業所得なら売上−経費−青色申告特別控除) − 43万円
- 区分ごとに「算定基礎額 × 所得割率 + 均等割額」を計算(上限あり)
- 全部を合計したものが年間保険料
計算例: 所得400万円・35歳・単身の場合
- 算定基礎額: 400万円 − 43万円 = 357万円
- 医療分: 357万 × 7.51% + 47,600円 ≒ 315,700円
- 支援金分: 357万 × 2.80% + 17,600円 ≒ 117,500円
- 子育て支援金分: 357万 × 0.27% + 1,873円 ≒ 11,500円
- 年間合計 ≒ 約44.5万円(月あたり約3.7万円)
所得別の国保料 早見表(単身・40歳未満)
同じ計算式で所得を変えて試算すると、おおよそ次のようになります。介護分(40〜64歳)が加わるとこれより1割強上乗せされ、扶養家族の均等割も人数分加算されます。あくまで東京23区・令和8年度の料率での目安で、自治体により差が出ます。
| 前年の所得(売上−経費−青色控除) | 年間保険料の目安 | 月あたり |
|---|---|---|
| 200万円 | 約23.3万円 | 約1.9万円 |
| 300万円 | 約33.9万円 | 約2.8万円 |
| 400万円 | 約44.5万円 | 約3.7万円 |
| 500万円 | 約55.1万円 | 約4.6万円 |
| 600万円 | 約65.6万円 | 約5.5万円 |
| 700万円 | 約76.2万円 | 約6.4万円 |
上表は当サイトの手取りシミュレーターと同じ計算エンジンで算出した概算です(データ基準日: 2026-07-02)。売上・経費・介護分の有無を入れた自分のケースは下のツールで試算できます。
自分の国保・税金込みの手取りを計算する売上と経費を入れるだけで国保・年金・税金を一括試算
「月あたり」と納付書の1回分は違います
早見表の月額は年額を12で割った家計管理用の平均で、納付書の請求額ではありません。 練馬区・新宿区の普通徴収は、4月から翌年3月までの年間保険料を6月から翌年3月までの10回に分けて納めます。納付回数は自治体や徴収方法で異なるため、実際の引き落としに備えるときは通知書の各期の金額を使ってください。
| 見る数字 | 意味・確認すること |
|---|---|
| 年間保険料 | 年度全体の負担。対象年度・加入者・軽減の反映を確認 |
| 月あたりの平均 | 年額÷12。毎月の積立目安であり、各納期の請求額ではない |
| 各期の納付額 | その納期限までに払う金額。口座残高はこちらに合わせる |
| 年度途中の加入・脱退 | 加入期間による再計算と残りの納期を確認。月平均をそのまま納付額にしない |
均等割の軽減制度(7割・5割・2割)
前年の所得が低い世帯は、申請しなくても均等割が自動で軽減されます(所得割はこの軽減の対象外です)。開業1年目や売上が伸びなかった年は、この軽減で保険料がかなり下がることがあります。判定は「世帯の総所得金額等」で行い、7割・5割・2割の3段階です。
| 軽減割合 | 世帯の総所得金額等の基準 | 加入者1人なら |
|---|---|---|
| 7割軽減 | 43万円 以下 | 43万円以下 |
| 5割軽減 | 43万円 + 31万円 × 加入者数 以下 | 74万円以下 |
| 2割軽減 | 43万円 + 57万円 × 加入者数 以下 | 100万円以下 |
計算例: 単身・前年の総所得60万円のフリーランス
- 5割軽減の基準(43万円+31万円=74万円)以下なので、均等割が5割軽減
- 均等割の年額(医療47,600円+支援17,600円+子育て1,873円=67,073円)が半額の約33,500円に(約33,500円の軽減)
- 所得割は軽減対象外だが、課税のもとが小さいため合計負担も小さくなる
国保を抑える方法
- 青色申告にする — 65万円控除はそのまま国保の算定基礎を下げます(青色と白色の違い)。65万円控除には複式簿記が要件で、対応する会計ソフトを比較して選ぶと記帳のハードルが下がります
- 経費の計上漏れをなくす — 経費チェックリストで確認
- 低所得時は軽減制度 — 所得が一定以下なら均等割が7割・5割・2割軽減されます(申請不要、申告が必要)
- 文芸美術国民健康保険組合など国保組合 — 対象業種なら保険料が定額のため、所得が高い人は有利になることがあります
- 法人化して協会けんぽに加入 — 所得が大きい場合の選択肢(法人化の目安)
なお、支払った国保保険料は全額が社会保険料控除として所得税・住民税の計算で控除されます。確定申告で忘れずに記載しましょう。
よくある質問
退職して開業後の収入が少ないのに、国保が高いのはなぜですか?
所得割の基礎は現在の売上ではなく前年の所得で、会社員時代の給与所得も含まれるためです。対象年度・前年の所得・加入者と加入期間をそろえて自治体で試算してください。納付が難しい場合は減免の相談先も確認しましょう。
国保の月額目安より納付書の金額が高いのはなぜですか?
月額目安は年額を12で割った平均ですが、納付書は自治体が定めた納期ごとの請求です。例えば練馬区・新宿区の普通徴収は年間保険料を10回で納めるため、1回分は月平均より多くなります。通知書の年間保険料と各期の納付額を分けて確認してください。
フリーランスの国民健康保険料は月いくらくらいですか?
所得(売上−経費−青色控除)によって変わります。東京23区の令和8年度料率の目安では、所得200万円で月約1.9万円、400万円で月約3.7万円、600万円で月約5.5万円程度です(40歳未満・単身・軽減なし)。自治体により金額は異なり、40〜64歳は介護分が上乗せされます。
国民健康保険料に上限はありますか?
あります。賦課限度額と呼ばれ、東京23区の令和8年度では医療分67万円+支援金分26万円+子育て支援金分3万円+介護分17万円の合計で年間最大113万円(40〜64歳)です。
開業1年目の国保はどうなりますか?
国保は前年の所得をもとに計算されるため、開業1年目は前年(会社員時代など)の所得で計算されます。退職直後は任意継続(退職前の健康保険を最大2年継続)と国保のどちらが安いか比較するのがおすすめです。国保・任意継続・国保組合の選び方は[フリーランスの保険の整理](/guide/hoken-seiri/)で詳しく比較しています。
国民健康保険料は経費になりますか?
経費にはなりませんが、全額が社会保険料控除として所得控除の対象になります。事業の経費ではなく、確定申告書の所得控除欄に記載します。
