法人化(法人成り)の目安はいくらから?個人事業主との比較表

所得が増えてくると気になるのが法人化(法人成り)です。よく「所得800万円が目安」と言われますが、これは個人の所得税が累進課税(最高45%)なのに対し、法人税等の実効税率がおおむね一定(中小法人で約25〜35%)であることが理由です。ただし目安はあくまで目安で、家族構成や事業の性質によって最適解は変わります。

比較表: 個人事業主と法人

個人事業主と法人の比較
項目個人事業主法人(合同会社・株式会社)
税率累進課税 5〜45%+住民税10%法人税等 実効税率おおむね25〜35%(所得800万円以下の部分は軽減税率)
給与所得控除なし役員報酬に給与所得控除が使える(経費と控除の二重取り構造)
社会保険国民年金+国民健康保険厚生年金+健康保険に強制加入(会社負担分も実質自己負担)
赤字の繰越青色で3年10年
設立費用0円(開業届のみ)合同会社 約6〜10万円 / 株式会社 約20〜25万円
維持コストほぼなし赤字でも法人住民税 均等割 年約7万円+税理士費用(年20〜40万円が相場)
経理・申告自分で可能法人決算は複雑で税理士依存度が高い
信用力取引先により制限あり法人でないと取引しない企業とも契約可能

「所得800万円」が目安と言われる理由

課税所得が695万円を超えると所得税率は23%、900万円を超えると33%になり、住民税10%と合わせた限界税率は33〜43%に達します。一方、法人化して役員報酬で所得を分散すると、法人税の軽減税率と給与所得控除の効果で総負担が下がるケースが出てきます。自分の現在の負担率は[手取りシミュレーター](/tools/tedori/)で確認できます。

税率の一次情報は国税庁タックスアンサーで確認できます。所得税はNo.2260で5%から45%の7段階(課税所得695万円〜899万9,000円の区分は23%、900万円〜1,799万9,000円の区分は33%)とされています。法人税はNo.5759で、資本金1億円以下の普通法人(適用除外事業者等を除く)について年800万円以下の部分は15%、年800万円超の部分は23.2%とされています。これに法人住民税・法人事業税などが加わるため、実際の負担率は税理士への試算で確認してください。
法人化の損益分岐は「税金」だけでは決まりません。社会保険料の増加(会社負担分を含む)と維持コストを含めると、目安より高い所得まで個人事業主が有利なケースも多くあります。実行前に必ず税理士に試算を依頼してください。

法人化のメリット「給与所得控除」は具体的にいくら?

法人化すると、事業の利益をいったん会社の売上とし、自分には役員報酬(給与)として支払えます。この役員報酬には会社員と同じ給与所得控除が使えるため、同じ手取りでも課税対象を圧縮できるのが法人化の代表的なメリットです。国税庁タックスアンサーNo.1410(令和7年分以降)の計算式で、役員報酬別の給与所得控除額を試算すると次のようになります。

役員報酬別の給与所得控除額(No.1410の計算式による試算・令和7年分以降)
役員報酬(年)計算式給与所得控除額
400万円400万円×20%+44万円124万円
600万円600万円×20%+44万円164万円
800万円800万円×10%+110万円190万円
850万円以上上限195万円(頭打ち)
たとえば役員報酬を年600万円にすると、そのうち164万円が給与所得控除として差し引かれ、残りが給与所得として課税されます(No.1410、令和7年分以降。給与収入360万円超660万円以下は「収入金額×20%+44万円」、660万円超850万円以下は「収入金額×10%+110万円」で上限195万円)。個人事業主の事業所得にはこの控除がありません。ただし役員報酬は会社の損金(経費)になる一方、受け取る個人側では社会保険料や所得税の対象になるため、控除額の大きさだけで有利不利は決まりません。

法人化を検討するサインのチェックリスト

  • 課税所得(売上−経費−控除)が継続的に800万円を超えている
  • 売上1,000万円超が続き、消費税の課税事業者になっている
  • 大手企業との取引で「法人であること」を求められた
  • 家族に給与を払って所得分散したい
  • 厚生年金に入って将来の年金額を増やしたい
  • 事業拡大のために融資・採用を本格化したい

2つ以上当てはまるなら、税理士への個別試算を検討するタイミングです。個人事業主のうちは日々の記帳から確定申告までクラウド会計ソフトで自分で完結できますが、法人化すると決算・申告が複雑になり税理士への依存度が上がります。この差もコストとして見込んでおくと判断しやすくなります。多くの会計ソフト会社や税理士事務所が無料の法人化シミュレーション相談を提供しています。

よくある質問

法人化の目安は所得いくらからですか?

一般に課税所得800万円前後が目安と言われます。ただし社会保険料の増加や維持コストを含めると分岐点は人により異なるため、目安に達したら税理士に個別試算を依頼するのが確実です。

法人化すると消費税はどうなりますか?

資本金1,000万円未満で設立した法人は、設立から最大2年間、消費税の免税事業者になれる場合があります。ただしインボイス制度のもとでは登録の必要性との兼ね合いで実益が小さくなるケースもあります。

合同会社と株式会社はどちらがいいですか?

税制上の扱いはほぼ同じです。設立費用が安い(約6〜10万円)合同会社を選ぶフリーランスが増えていますが、対外的な信用や将来の資金調達を重視するなら株式会社という選択もあります。

法人化のデメリットは何ですか?

赤字でも法人住民税の均等割(年約7万円)がかかること、社会保険への強制加入で保険料負担が増えうること、決算・申告が複雑になり税理士費用がかかること、お金の自由度が下がる(会社のお金と個人のお金が区別される)ことが主なデメリットです。

役員報酬の給与所得控除は具体的にいくらですか?

国税庁タックスアンサーNo.1410(令和7年分以降)の計算式によると、役員報酬が年600万円なら給与所得控除は164万円、年800万円なら190万円です(給与収入850万円以上は195万円で頭打ち)。個人事業主の事業所得にはこの控除がないため、利益を役員報酬にできる点が法人化の代表的なメリットとされます。ただし社会保険料の増加や維持コストと合わせて総合的に判断する必要があります。