フリーランスの経費一覧チェックリスト

結論から言うと、フリーランスの経費に「いくらまで」という金額の上限はありません。判断基準は『その支出が事業の収入を得るために必要か』の一点です。 よく使う勘定科目は、通信費(スマホ・ネット回線)、地代家賃(自宅兼事務所)、消耗品費(10万円未満の備品)、旅費交通費、支払手数料、外注工賃あたりが中心になります。逆に所得税・住民税・国民年金保険料・国民健康保険料は経費になりません(年金・国保は経費ではなく、確定申告で社会保険料控除として全額が所得控除になります)。自宅や私物を仕事に使っている分は家事按分、10万円以上の備品は減価償却、開業前の支出は開業費として扱います。以下、勘定科目つきの一覧表・上限の考え方・節税効果・家事按分・迷いやすい支出の順に整理します。

経費にできる主な支出一覧(勘定科目つき)

フリーランスの経費と勘定科目の対応表
支出の例勘定科目ポイント
スマホ代・ネット回線通信費私用と兼用なら事業利用分を家事按分
自宅兼事務所の家賃地代家賃使用面積や時間で按分して計上
文房具・10万円未満のPC周辺機器消耗品費10万円以上は原則として固定資産(減価償却)
書籍・業務関連の有料購読新聞図書費事業に関係する情報収集が対象
電車・バス・打ち合わせの移動旅費交通費日付・行き先・目的をメモしておく
取引先との会食・手土産接待交際費相手と目的の記録を残す
業務の一部の外部委託外注工賃支払先によっては源泉徴収が必要な場合あり
振込手数料・販売手数料支払手数料クラウドソーシングの手数料もここ
広告出稿・名刺・ポートフォリオサイト広告宣伝費営業目的の制作費も対象
自宅兼事務所の電気代水道光熱費業務での使用時間などで按分
業務用ソフト・クラウドサービスの月額通信費/消耗品費科目は継続して同じものを使う
セミナー・研修・スクールの受講料研修費現在の事業に直接必要なスキルが対象
取材・資料収集にかかる費用取材費/新聞図書費業種に合わせて科目名を調整
事業用の損害保険・賠償責任保険損害保険料自宅兼事務所の火災保険は按分
個人事業税・固定資産税・印紙税・自動車税租税公課所得税・住民税は含めない
10万円以上の備品の当期償却分減価償却費耐用年数に応じて分割(下記参照)
ガソリン代・駐車場・車検(事業利用分)車両費/旅費交通費私用兼用なら走行距離などで按分
少額でどの科目にも入らない支出雑費多用は避け、継続的な支出は専用の科目へ

職種別の経費の具体例(勘定科目つき)

結論から言うと、経費にできるかどうかは職種で決まるのではなく、どの職種でも「その支出が事業の収入を得るために必要か」(国税庁 No.2210)で判断します。ただし職種ごとに「よく使う経費」と勘定科目には傾向があります。自分の職種に近い例を出発点に、実態に合わせて調整してください。

職種別・よく使う経費と勘定科目の例
職種よく使う経費の例主な勘定科目
ITエンジニア・プログラマーサーバー/クラウド利用料、開発ツールのサブスク、技術書、外部ディスプレイ(10万円未満)通信費/消耗品費/新聞図書費
Webデザイナー・イラストレーターデザインソフトの月額、素材・フォント購入、ペンタブ・液タブ、参考書籍通信費/消耗品費/新聞図書費
ライター・編集者取材の交通費・宿泊費、資料・書籍・新聞購読、文字起こしの外注、有料データベース旅費交通費/新聞図書費/外注工賃
動画編集・映像クリエイター編集ソフトの月額、BGM・効果音・素材の購入、外付けSSD、撮影機材(金額により減価償却)通信費/消耗品費/減価償却費
カメラマン・フォトグラファーレンズ・カメラ本体(10万円以上は減価償却)、スタジオ・ロケ地の利用料、レタッチソフト減価償却費/消耗品費/賃借料
コンサルタント・講師セミナー・研修の受講料、業界レポート・書籍、打ち合わせの会食、移動費研修費/新聞図書費/接待交際費/旅費交通費
ハンドメイド作家・物販材料の仕入れ、梱包資材、出店料、フリマ・ECの販売手数料仕入高/荷造運賃/支払手数料
上の科目はあくまで一例で、同じ支出でも継続して同じ科目を使うことが大切です。私用と兼用のスマホ・自宅家賃・電気代などはどの職種でも家事按分し(上記参照)、10万円以上の機材は原則として減価償却します。判断の軸は職種ではなく「事業の収入を得るために必要か」で、これは国税庁タックスアンサーNo.2210の必要経費の考え方に沿っています。科目の振り分けや家事按分の記帳をまとめて楽にしたい場合は、機能・料金で選ぶ会計ソフトの比較も参考になります。

フリーランスの経費に上限はある?いくらまで計上できる?

結論から言うと、経費に「いくらまで」という金額の上限はありません。国税庁は必要経費を「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額」と「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」と説明しており(No.2210)、金額の上限や「売上の◯%まで」といった一律の基準は設けていません。判断の軸はあくまで、その支出が事業の収入を得るために必要か(事業との関連を説明できるか)です。

「経費率(売上に占める経費の割合)は◯%まで」といった公的な上限はありません。ただし売上に対して経費が不自然に大きい場合や、私的な支出との区分があいまいな場合は、税務署から内容の説明を求められることがあります。上限で考えるのではなく、一つひとつの支出について事業との関連と金額の根拠を記録しておくことが大切です。

経費の内訳の一例(売上400万円のケース)

経費の目安は業種や働き方で大きく変わりますが、イメージをつかむために在宅中心のフリーランス(売上400万円)の内訳例を示します。あくまで一例で、実際は自分の支出の実態に合わせて計上します。

在宅中心のフリーランス(売上400万円)の経費内訳の一例
費目勘定科目年間の目安
自宅家賃の按分(床面積の30%)地代家賃360,000円
電気代・通信費の按分水道光熱費/通信費138,000円
業務ソフト・クラウドサービスの月額通信費/消耗品費84,000円
PC・周辺機器(10万円未満)消耗品費90,000円
書籍・研修・情報収集新聞図書費/研修費60,000円
取引先との打ち合わせ・移動旅費交通費/会議費48,000円
振込・販売手数料支払手数料36,000円
経費合計(目安)—約816,000円

この例では売上400万円に対して経費が約82万円(約20%)ですが、これは「20%が目安」という意味ではありません。仕入れや外注の多い業種ではもっと高く、在宅・単独で完結する業種では低くなります。経費を引いたあとの手取りは手取り計算ツールで試算でき、家事按分や記帳の手間を減らしたい場合は会計ソフトの機能・料金の比較も参考になります。

経費を計上すると税金はどれくらい減る?

結論から言うと、経費は「使った額がそのまま戻る」のではなく、経費額 ×(所得税の税率+住民税10%)の分だけ税金が軽くなります。所得税は課税される所得金額に応じた累進税率(5〜45%)、住民税の所得割は標準税率で一律10%です。たとえば課税される所得金額が195万円以下(所得税率5%)の人なら、経費を10万円計上すると約15,000円(所得税5%+住民税10%)の節税になります。

経費10万円を計上したときの節税額の目安(所得税+住民税の合計税率)
課税される所得金額所得税率所得税+住民税の合計経費10万円あたりの節税額
195万円以下5%約15%約15,000円
195万円超〜330万円以下10%約20%約20,000円
330万円超〜695万円以下20%約30%約30,000円
695万円超〜900万円以下23%約33%約33,000円
所得税の税率は課税される所得金額に応じた7段階(5〜45%)です(国税庁 No.2260)。住民税の所得割は総務省が示す標準税率で一律10%(市町村民税6%+道府県民税4%)です。上表は分かりやすさのため復興特別所得税(所得税額の2.1%)や調整控除を省いた概算で、実際に適用される税率は自分の課税所得によって変わります。なお経費を増やして事業所得が下がると、翌年度の国民健康保険料の軽減につながる場合もあります。

家事按分の考え方

自宅で仕事をしている場合、家賃・電気代・通信費などは事業で使っている割合の分だけ経費にできます。割合は「仕事部屋の床面積÷住居全体の床面積」「1日のうち業務に使っている時間」など、第三者に説明できる合理的な基準で決め、その根拠をメモで残しておきましょう。適切な割合に迷う場合は、税理士や税務署に相談すると安心です。

国税庁タックスアンサーNo.2210では、家賃や水道光熱費のように家事上と業務上の両方にかかわる費用(家事関連費)のうち必要経費になるのは、「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限られるとされています。按分割合の数字そのものより、区分の根拠を記録で示せることが重要です。

家事按分の計算例

自宅兼事務所の家事按分の例
費目年間の支払事業割合経費にできる額
家賃1,200,000円床面積の30%360,000円
電気代120,000円使用時間の40%48,000円
通信費(スマホ・回線)180,000円50%90,000円

上の割合はあくまで一例です。面積・使用時間など自分の実態に合った合理的な基準で決め、その根拠(間取り図や使用時間のメモなど)を残しておきましょう。割合を毎年むやみに変えず、継続して同じ基準を使うことも大切です。

経費にならないもの

  • 所得税・住民税(事業の経費にはなりません)
  • 国民年金保険料・国民健康保険料(経費ではなく、確定申告で社会保険料控除として全額が所得控除になります)
  • 生計を一にする家族に支払う家賃(原則として経費になりません)
  • 事業と関係のない私的な飲食・旅行・衣服
  • 罰金・交通反則金

国民年金や国民健康保険料は経費にできない代わりに、所得控除として税負担を下げる効果があります。保険料の目安は国民健康保険料の計算方法で、税金・保険料を引いた手取り額は手取り計算ツールで確認できます。

「ふるさと納税やiDeCoは経費になる?」経費と所得控除は別物

結論から言うと、ふるさと納税・iDeCo・国民年金保険料などは経費ではなく「所得控除」です。経費も所得控除も課税所得を下げて税金を軽くする点は同じですが、経費は「事業の収入を得るために使ったお金」(国税庁 No.2210)、所得控除は保険料の支払いや寄附など税制で定められた一定の支出に応じて所得から差し引ける仕組みで、確定申告書で記入する欄も別です。「これは経費になる?」と迷う支出の多くは、実は経費ではなく所得控除で税負担を下げるものです。

「経費になる?」とよく迷う支出の正しい扱い
支出経費になる?正しい扱い(一次情報)
国民年金保険料・国民健康保険料ならない社会保険料控除として支払額の全額が所得控除(No.1130)
iDeCo・小規模企業共済の掛金ならない小規模企業共済等掛金控除として掛金の全額が所得控除(No.1135)
ふるさと納税ならない寄附金控除として「寄附額−2,000円」が所得控除(No.1150)
1年間の医療費(自己負担分)ならない医療費控除として原則10万円を超えた分が所得控除(No.1120)
事業で使うサーバー代・打ち合わせの交通費なる必要経費として売上から差し引く(No.2210)
経費と所得控除は、確定申告書での書く場所も違います。経費は青色申告決算書・収支内訳書の経費欄に、所得控除は確定申告書の所得控除の欄に記入します。どちらも課税所得を下げる効果は同じで、節税額は「(経費または控除の額)×(所得税率+住民税10%)」で考えられます。たとえば所得税率10%の人がiDeCoに年24万円掛けると、小規模企業共済等掛金控除として掛金の全額が所得控除になり、約48,000円(24万円×20%)の節税になります。ふるさと納税は税金が減る代わりに寄附として支出するため、実質2,000円の自己負担で返礼品を受け取る仕組みである点が、純粋に税負担だけが減る他の控除と異なります。

各控除の詳しい内容は、国民健康保険料の計算方法・小規模企業共済とiDeCoの節税効果・個人事業主のふるさと納税の限度額・医療費控除の対象と計算方法でそれぞれ確認できます。ふるさと納税の自分の限度額はふるさと納税の限度額シミュレーションでも試算できます。

家族に払う給料は経費にできる?(専従者給与・専従者控除)

結論から言うと、生計を一にする家族への給料は原則として経費になりませんが、「専従者」の要件を満たして手続きをすれば経費にできます。青色申告なら「青色事業専従者給与」として届け出た範囲で相当な額を全額、白色申告なら「事業専従者控除」として配偶者は最高86万円・その他の親族は最高50万円を上限に経費(控除)にできます(国税庁 No.2075)。上の『経費にならないもの』で挙げた「家族への家賃」とは扱いが異なり、労働の対価としての給料はこの専従者の仕組みで経費化する形になります。

家族への給料を経費にする2つの方法(青色・白色)
項目青色事業専従者給与事業専従者控除(白色)
経費にできる額届け出た範囲内で、労務の対価として相当な額を全額配偶者は最高86万円/その他の親族は最高50万円(下記のいずれか低い方)
事前の届出「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要不要(確定申告書に記載して適用)
上限の考え方労務の対価として相当な範囲(過大な部分は経費にならない)上記の額と「控除前の事業所得等 ÷(専従者数+1)」のいずれか低い方
青色・白色のどちらも、専従者にできるのはその申告者と生計を一にする配偶者その他の親族で、その年の12月31日現在で15歳以上、かつその年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事している人に限られます(国税庁 No.2075)。他に本業がある家族や、原則として学業が本分の学生は「専ら従事」に当たらないことが多い点に注意してください。なお、専従者として給与・控除の対象にした家族は、あなたの申告での配偶者控除・扶養控除の対象からは外れます。

事業専従者控除(白色)の計算例

  • 白色申告で控除前の事業所得が300万円、配偶者1人だけが専従しているケース
  • 配偶者の上限額: 86万円
  • 所得を按分した額: 300万円 ÷(専従者1人+1)= 150万円
  • いずれか低い方の 86万円 が事業専従者控除の額になる

青色事業専従者給与を使うには、複式簿記での記帳と「青色事業専従者給与に関する届出書」を期限内に出しておくことが前提です。届出や記帳の負担を抑えたい場合は主要な会計ソフトの機能・料金の比較も参考になります。青色と白色それぞれの要件は青色申告と白色申告の違いで確認できます。

判断に迷いやすい支出

経費になるか迷いやすい支出の考え方
支出考え方
スーツ・仕事用の服私生活でも着られる衣服は原則経費になりにくい。撮影用の衣装など事業専用と説明できるものは対象
10万円以上のパソコン原則は減価償却(下表参照)。一定要件を満たす青色申告者の少額特例は、2026年3月31日以前の取得分は30万円未満、2026年4月1日〜2029年3月31日の取得分は40万円未満が対象(年合計300万円まで)
健康診断・人間ドック個人事業主本人の健康管理費は原則経費にならない
カフェでの作業代・打ち合わせ打ち合わせや取材など事業目的なら会議費等で計上可。単なる自分の飲食は対象外
資格取得・スクール費用現在の事業に直接必要なスキルの維持・向上は対象になりやすい。新たな資格の取得費は判断が分かれる
自宅の一室の家賃・光熱費事業で使う割合を家事按分して計上(上記参照)

仕事用の服・スーツは経費になる?

衣服は私生活でも着られるため、家賃や光熱費と同じ家事関連費にあたります。国税庁タックスアンサーNo.2210のとおり、家事関連費が必要経費になるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限られます。つまり分かれ目は値段の高さではなく、私生活と区分できるかどうかです。

衣服費の考え方
例扱い
スーツ・シャツ・靴・カバン私服としても使えるため原則対象外。「打ち合わせ用」という理由だけでは区分できない
屋号やロゴの入った制服・ユニフォーム事業専用と説明できるため対象になりやすい
撮影・出演・イベント用の衣装使用した案件と日付を記録できれば対象。私用に転用した分は除く
作業服・安全靴・ヘルメットなどの保護具業務でしか使わないものは対象
クリーニング代対象になる衣服の分のみ。私服の分は含めない
対象になるものでも、いつ・どの業務で使ったかを記録に残すことが前提です。レシートに用途をメモする、案件名と紐づけておくといった運用で「区分できる」状態を作っておきます。

10万円以上の備品は「減価償却」

取得価額が10万円以上の備品は、原則その年に全額を経費にできず、耐用年数にわたって分割で経費(減価償却費)にします。金額帯によって次の選択肢があります(国税庁 No.2100)。

取得価額別・経費計上の方法
取得価額経費にする方法
10万円未満その年に全額を消耗品費等で経費にできる
10万円以上20万円未満一括償却資産として3年間で均等に経費にできる(青色・白色とも可)
10万円以上で、右記の少額特例の取得価額基準を満たすもの一定要件を満たす青色申告者は少額減価償却資産の特例で一括計上可。2026年3月31日以前の取得分は30万円未満、2026年4月1日〜2029年3月31日の取得分は40万円未満(年合計300万円まで)
上記の少額特例等を使わないもの固定資産として耐用年数に応じて減価償却

私用兼用のPCは、按分前・按分後のどちらで金額区分を判定する?

金額区分は家事按分前の取得価額で判定し、その後に、その年の費用のうち事業で使う分だけを経費にします。 たとえば取得価額18万円のPCを仕事で50%使っても、事業分9万円を基準に「10万円未満の消耗品」として一括計上するわけではありません。まず18万円で減価償却・一括償却・要件を満たす青色申告者の少額特例などの方法を確認し、選んだ方法で計算したその年の費用を事業分と私用分に分けます。取得価額と事業使用割合の根拠は、別々に記録しておきましょう。

備品の金額基準とこの判定順序を2026年10月10日に確認:国税庁所得税基本通達49-39の通常1単位ごとの取得価額判定、No.2100の金額基準、No.2210の家事関連費の区分を組み合わせた説明です。No.2100・2210は令和8年4月1日現在法令等。例は1年以上使う自分の業務用PCで、現金主義の特例や貸付用資産は対象外です。取得価額は採用する税込・税抜経理に従い、消費税の免税事業者は税込で判定します。事業で使い始めた年に費用化する点も確認してください。

開業前にかかった費用は「開業費」としてあとから経費にできる

結論から言うと、開業する前に支払った準備費用は「開業費」としてまとめて計上でき、あとから好きな年に経費(償却費)にできます。開業費とは「事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」をいい(所得税法施行令第7条第1項第1号)、開業前につくった名刺・チラシ、開業のための打ち合わせや視察の交通費、市場調査やセミナーの受講料などが該当します。開業してから「開業前のレシートは経費にできないのでは」と捨ててしまう人が多いのですが、これらは繰延資産として計上できる可能性があるため、開業前の支出も日付・金額・内容がわかる形で残しておきましょう。

すべての開業前支出が開業費になるわけではありません。取得価額10万円以上のパソコンなどの備品は開業費ではなく固定資産として減価償却、販売用の商品の仕入れは棚卸資産として扱うのが一般的です。開業費に含めるのは、あくまで「開業準備のために特別に支出した費用」です。

開業費の2つの償却方法

開業費(繰延資産)を経費にする2つの方法
方法内容
均等償却60か月(5年)で毎年均等に経費にする
任意償却繰延資産の額の範囲内で、好きな年に好きな額を経費にできる。支出した年に全額でも、その年は0円でもよい
開業費(繰延資産)の償却は、60か月の均等償却か任意償却のいずれかを選べます(所得税法施行令第137条第1項第1号・第3項)。国税庁の質疑応答事例「償却期間経過後における開業費の任意償却」では、任意償却について「その下限が設けられていないことから、支出の年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよい」「繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入することができます」と説明されています。ただし、支出した開業費の内容と、その額が過年分で必要経費に算入されていないことを記録で明らかにしておく必要があります。

任意償却を使えば、赤字の年は償却せず、利益が出た年にまとめて経費にするといった調整ができます。開業初年度は売上が伸びず税負担も軽いことが多いため、開業費をあえて残しておき、所得が増えて税率が上がった年に償却して節税する、という使い方も可能です。帳簿づけや繰延資産の管理を楽にしたい場合は会計ソフトを使った記帳も検討してみてください。

その経費はいつの年の分?(計上時期と年をまたぐ支払い)

結論から言うと、経費はお金を「支払った年」ではなく、その支出のもとになる債務が確定した年の経費になります(国税庁 No.2210)。たとえば12月に使ったサーバー代やサブスク料金を翌年1月に支払っても、使った年(債務が確定した年)の経費です。逆に翌年分の家賃やサービス料を先に前払いしても、原則としてその年の経費にはなりません。年末付近の取引は「お金がいつ動いたか」ではなく「取引がいつ確定したか」で年分を分けるのが基本です。

国税庁タックスアンサーNo.2210では、必要経費になるのは「その年において債務の確定した金額」とされ、次の3つをその年の12月31日までに満たすことが債務確定の要件です。(1)債務が成立していること、(2)その債務にもとづいて給付をすべき原因となる事実が発生していること、(3)金額を合理的に算定できること。この3つを満たせば、実際の支払いが翌年でもその年の経費(未払費用)になります。逆に、支払っていても年末時点で債務が確定していないもの(翌年分の前払いなど)は、その年の経費にはなりません。
年をまたぐ支払い・入金の計上時期の例
ケースどの年の経費・収入になるか
12月に受けたサービスの料金を、翌年1月に支払った使った年(12月が属する年)の経費。支払いは翌年でも債務が確定しているため、未払費用として計上する
翌年1〜12月分のサーバー代・家賃などを、年末にまとめて前払いした原則として期間が対応する翌年の経費(前払費用)。当年にはまだ債務が確定していないため計上しない
12月20日に納品・請求し、入金は翌年1月10日だった納品した年の売上。収入は代金を受け取る権利が確定した年に計上する(国税庁 No.2200)

このように個人事業では、収入も経費も「お金の動き」ではなく「取引が確定したタイミング」で年分を分けるのが原則です(発生主義)。年末をまたぐ取引は、請求日・納品日・支払日を控えておくと、どちらの年の経費・収入か迷いません。未払費用や前払費用の仕訳を自動で管理したい場合は、会計ソフトの機能・料金の比較も参考になります。

レシート・領収書の保存ルール

経費として認められるには、支出の事実を示す書類の保存が前提です。青色申告では帳簿や領収書などを原則7年(一部の書類は5年)保存するとされており、白色申告にも保存義務があります。領収書ではなくレシートでも、日付・金額・内容がわかれば基本的に問題ないとされています。月ごとに封筒やファイルで分けておくだけでも、申告時の負担が大きく減ります。青色・白色の違いは青色申告と白色申告の違いをご覧ください。レシート撮影から記帳までを自動化したいなら会計ソフトで経費を管理する方法も検討してみてください。

保存期間の一次情報は国税庁タックスアンサーにまとまっています。青色申告では帳簿や決算関係の書類は原則7年間(請求書・見積書・納品書・送り状などは5年間)の保存とされています(No.2070)。白色申告でも、収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)は7年間、業務に関して作成・受領した請求書・領収書などの書類は5年間保存することとされています(No.2080)。
経費にできるかどうかはあくまで個別の事情によって判断されます。判断に迷う支出や金額の大きい支出は、税理士や税務署に確認してから計上することをおすすめします。

よくある質問

フリーランスの経費に上限はありますか?

金額の上限はありません。国税庁も必要経費に「いくらまで」「売上の◯%まで」といった一律の基準は定めておらず、事業の収入を得るために必要かどうかで判断します(No.2210)。ただし売上に比べて経費が不自然に大きいと、税務署から内容の説明を求められることがあります。

売上に対して経費はどのくらいの割合が目安ですか?

業種や働き方で大きく変わるため、一律の目安はありません。仕入れや外注の多い業種では経費率が高く、在宅・単独中心の業種では低くなります。割合で考えるよりも、一つひとつの支出について事業との関連と金額の根拠を残しておくことが大切です。

家賃はいくらまで経費にできますか?

金額の上限が決まっているわけではなく、事業で使用している割合(家事按分)で計上します。仕事部屋の床面積の割合など、第三者に説明できる合理的な基準で決め、根拠を残しておきましょう。

国民年金や国民健康保険料は経費になりますか?

経費にはなりません。ただし確定申告で社会保険料控除として支払額の全額を所得から差し引けるため、税負担を下げる効果はあります。経費と所得控除は別の仕組みです。

レシートしかなくても経費にできますか?

原則としてレシートでも支出の証明として扱われています。日付・金額・内容が確認できることが重要です。レシートが出ない支出(ご祝儀・自販機など)は、出金伝票に記録して補完する方法が一般的です。

仕事用のスーツや服は経費になりますか?

私的にも着用できる衣服は、原則として経費と認められにくいとされています。撮影用の衣装など事業専用と説明できるものは別ですが、判断に迷う場合は税理士に確認しましょう。

10万円以上のパソコンは一度に経費にできますか?

原則はその年に全額ではなく、減価償却で分割して経費にします。ただし取得価額20万円未満なら一括償却資産として3年均等です。一定要件を満たす青色申告者の少額特例は、2026年3月31日以前の取得分は30万円未満、2026年4月1日〜2029年3月31日の取得分は40万円未満が対象で、年合計300万円まで業務に使い始めた年に一括計上できます。私用兼用なら事業で使う分に限ります。

経費を増やすと税金はいくら減りますか?

経費額 ×(所得税の税率+住民税10%)が減る税金の目安です。所得税率は課税される所得金額に応じて5〜45%と変わるため、課税所得195万円以下(税率5%)の人なら経費10万円で約1.5万円、330万円超695万円以下(税率20%)の人なら約3万円の節税になります。使った額がそのまま戻るわけではない点に注意しましょう。

私用兼用のPCは、事業分が10万円未満なら消耗品費にできますか?

事業分の金額だけでは判定しません。家事按分前の取得価額で方法を選び、その年の費用のうち事業で使う分を経費にします。取得価額18万円・事業使用50%なら、9万円ではなく18万円で判定します。1年以上使う自分の業務用PCの例で、現金主義の特例や貸付用は除きます。税込・税抜経理の方式と使用開始年も確認してください。

開業前に買った名刺やセミナー代は経費にできますか?

開業準備のために特別に支出した費用は「開業費」として繰延資産に計上でき、あとから償却費として経費にできます。名刺・チラシの制作費、開業前の打ち合わせや視察の交通費、市場調査・セミナー受講料などが該当します(所得税法施行令第7条第1項第1号)。ただし10万円以上のパソコンなどは固定資産として減価償却、販売用の仕入れは棚卸資産として扱うのが一般的です。

開業費はいつ経費にすればよいですか?

60か月の均等償却か、任意償却のいずれかを選べます。任意償却なら繰延資産の額の範囲内で好きな年に好きな額を経費にでき、支出した年に全額でも、その年は0円でもかまいません。赤字の年は償却せず、利益が出た年にまとめて償却する調整も可能です(国税庁 質疑応答事例「償却期間経過後における開業費の任意償却」)。

エンジニアやデザイナーはソフトのサブスク代を経費にできますか?

事業で使う開発ツールやデザインソフトの月額利用料は、通信費や消耗品費として経費にできます。私用と兼用の場合は事業で使う分を家事按分します。科目は毎年同じものを継続して使うことが大切です。判断の軸は職種ではなく「事業の収入を得るために必要か」で、これは国税庁の必要経費の考え方(No.2210)に沿っています。

職種によって経費にできる範囲は変わりますか?

経費にできるかどうかの基準は職種で変わりません。どの職種でも「その支出が事業の収入を得るために必要か」で判断します(No.2210)。ただし職種ごとに『よく使う経費』と勘定科目には傾向があるため、自分の職種に近い例を出発点にすると整理しやすくなります。

家族に手伝ってもらった分の給料は経費にできますか?

生計を一にする家族への給料は原則として経費になりませんが、青色申告なら「青色事業専従者給与」として事前に届け出た範囲で相当な額を全額、白色申告なら「事業専従者控除」として配偶者最高86万円・その他の親族最高50万円を上限に経費(控除)にできます。対象は12月31日時点で15歳以上、その年を通じて6か月を超えて事業に専ら従事する家族です(国税庁 No.2075)。専従者にした家族は、配偶者控除・扶養控除の対象からは外れます。

12月に使った経費を翌年1月に支払った場合、どちらの年の経費になりますか?

支払った年ではなく、債務が確定した年(=サービスを受けた12月が属する年)の経費になります。必要経費になるのは「その年において債務の確定した金額」とされ、その年の12月31日までに債務の成立・給付原因となる事実の発生・金額の合理的な算定ができていれば、支払いが翌年でもその年の経費(未払費用)です(国税庁 No.2210)。逆に、翌年分をまとめて前払いした費用は、原則としてその年の経費にはなりません。

ふるさと納税やiDeCoは経費になりますか?

どちらも経費にはなりません。ふるさと納税は「寄附金控除」(寄附額−2,000円が所得控除/No.1150)、iDeCoや小規模企業共済の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」(掛金の全額が所得控除/No.1135)として扱います。国民年金・国民健康保険料も経費ではなく「社会保険料控除」(全額が所得控除/No.1130)です。経費は事業の収入を得るために使ったお金、所得控除は税制で定められた支出に応じて所得から差し引ける仕組みで、確定申告書の記入欄も別ですが、課税所得を下げて税金を軽くする効果は同じです。

カフェでの作業代は経費になりますか?

取引先との打ち合わせや取材など事業目的が説明できる場合は、会議費などで計上できます。一方、単に自分が作業しただけの飲食は事業との関連を説明しにくく、経費にしないのが無難です。

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