赤字でも確定申告したほうがいい理由|純損失の繰越控除(青色3年)と繰戻し還付【フリーランス】

開業したばかりの年や、設備投資・経費がかさんだ年は、フリーランス・個人事業主でも事業が赤字になることがあります。「赤字なら所得税はかからないし、確定申告はしなくてもいいのでは」と考えがちですが、青色申告をしている人は、赤字を確定申告しておくことで翌年以降の税金を減らせる可能性があります。この記事では、赤字(純損失)を繰り越せる「純損失の繰越控除」と、前年分の税金が戻る「繰戻し還付」の仕組みを、国税庁の情報をもとに整理します。

ここでいう「赤字」は、売上から必要経費を引いた事業所得などがマイナスになり、損益通算をしてもなお控除しきれない金額(純損失)を指します。生活費の赤字や、節税のために実態のない経費を計上した赤字は対象ではありません。帳簿にもとづいた正しい所得計算が前提です。

そもそも赤字でも確定申告は必要?

所得税の確定申告は、原則として所得がプラスで納税額が出る人の義務です。そのため、事業が赤字で納税額がゼロなら、確定申告の「義務」はないことが多くなります。ただし、義務がないことと「したほうが得かどうか」は別の話です。次のような場合は、赤字でも申告しておくメリットがあります。

  • 青色申告で純損失を繰り越したいとき(後述の繰越控除・繰戻し還付を使うには申告が必要)
  • 報酬から源泉徴収されている場合(申告すれば納めすぎた税金が還付されることがある)
  • 国民健康保険料や各種手続きで所得を証明する書類(所得証明・課税証明)が必要なとき
  • 翌年以降に黒字化したとき、過去の赤字とぶつけて税負担を下げたいとき

とくに繰越控除・繰戻し還付は、赤字の年にきちんと確定申告をしていることが利用の前提になります。「赤字だから申告しなくていい」と放置すると、これらの制度が使えなくなる点に注意してください。

まず損益通算で他の所得と相殺する

純損失の繰越しを考える前に、その年のなかで損失を他の所得と相殺できないかを確認します。これを損益通算といいます。国税庁によると、損益通算できる損失は次の4つの所得から生じたものに限られます(国税庁タックスアンサーNo.2250)。

  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 譲渡所得
  • 山林所得

たとえば、フリーランスの事業所得が赤字で、同じ年に会社員としての給与所得(副業の逆パターン)がある場合、事業の赤字を給与所得などと通算して、全体の所得を圧縮できることがあります。損益通算をしてもなお引ききれずに残った損失が「純損失」で、これが繰越控除・繰戻し還付の対象になります。

純損失の繰越控除(青色は翌年以後3年)

青色申告をしている人は、損益通算をしても控除しきれなかった純損失を、翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年分の所得金額から差し引けます(国税庁タックスアンサーNo.2070)。黒字になった年の所得を、過去の赤字でぶつけて減らせるという仕組みです。

純損失を翌年以後に繰り越す例(青色申告・イメージ)
その年の事業所得繰り越した赤字を差し引いた後
1年目−100万円(赤字)0円(翌年以後へ100万円を繰越し)
2年目+40万円0円(残り60万円を翌年へ繰越し)
3年目+80万円+20万円(残り60万円を差し引いた後)

上の例では、1年目の赤字100万円を2年目・3年目の黒字とぶつけることで、課税の対象になる所得を抑えられています。繰越しできる期間は赤字が出た年の翌年から3年間が基本で、その間に使いきれなかった分は切り捨てになります(特定非常災害による一定の損失は、繰越期間が延長される場合があります)。

繰戻し還付(前年も青色なら税金が戻る)

青色申告者には、純損失を翌年以降に繰り越す代わりに、前年分の所得に繰り戻して、前年に納めた所得税の還付を受けるという選択肢もあります。これが繰戻し還付です。利用するには、前年も青色申告をしていることが条件になります(国税庁タックスアンサーNo.2070)。

繰越控除と繰戻し還付の比較
比較する点純損失の繰越控除純損失の繰戻し還付
損失をぶつける相手翌年以後(最大3年)の黒字前年分の所得
効果将来の所得税を減らす前年に納めた所得税が戻る
主な条件損失が出た年に青色申告で確定申告前年・本年とも青色申告(請求書の提出が必要)
向いている場面翌年以降に黒字化が見込めるとき前年が黒字で納税していたとき

前年に利益が出て所得税を納めていた人が、今年は赤字になった——という場合は、繰戻し還付のほうが手元の資金繰りに効くことがあります。一方、前年も赤字だった、または開業初年度で前年分の納税がない場合は、繰戻し還付の対象になる税金がないため、翌年以降に向けた繰越控除を使うことになります。どちらが有利かは、前年と翌年以降の見通しによって変わります。

青色と白色で扱いが大きく違う

純損失の繰越控除・繰戻し還付は、国税庁が青色申告のメリットとして挙げている制度です(国税庁タックスアンサーNo.2070)。白色申告の場合、純損失の繰越しは原則として認められず、変動所得の損失や被災事業用資産の損失など一部の例外に限られるとされています。赤字の年があり得る事業では、繰越控除が使えるかどうかが青色・白色を分ける大きなポイントになります。

白色申告で純損失を繰り越せるかどうかは、損失の内容によって判断が分かれます。一般的な事業の赤字を繰り越したい場合は青色申告にしておくのが確実です。自分のケースが繰越しの対象になるか不安なときは、税務署に確認してください。

青色申告そのものの要件やメリットは青色申告と白色申告の違い、開業時の手続きは開業届の書き方チェックリストにまとめています。青色申告には事前の承認申請が必要で、記帳の手間もかかりますが、その分だけ赤字を将来に持ち越せるなどの保険的なメリットがあります。

赤字の年に確認しておくこと

  • 売上・経費を帳簿に記録し、純損失の金額を正しく計算する
  • 損益通算できる他の所得(不動産・事業・譲渡・山林)がないか確認する
  • 青色申告者は、確定申告書に純損失の繰越し(または繰戻し還付)の記載をする
  • 繰戻し還付を使う場合は、所定の請求書を期限内に提出する
  • 翌年以降に繰り越す金額を、確定申告書の控えで管理しておく
  • 報酬から源泉徴収されている分があれば、申告して還付を受けられるか確認する

黒字化した年に過去の赤字を差し引くと、課税対象の所得が下がり、所得税や国民健康保険料にも影響します。赤字・黒字を含めて手取りや負担の目安をつかみたいときは、手取り計算ツールで試算してみてください。日々の記帳や繰越額の管理は、会計ソフトを使うと申告書まで一気通貫で進められます。自分に合うソフトは会計ソフトの比較ランキングで選べます。

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よくある質問

事業が赤字なら確定申告はしなくてもいいですか?

赤字で納税額がゼロなら確定申告の義務はないことが多いですが、青色申告で純損失の繰越控除や繰戻し還付を使うには、赤字の年に確定申告をしておく必要があります。また、報酬から源泉徴収されている場合は申告で還付を受けられることがあり、所得証明が必要な手続きにも申告が役立ちます。赤字でも申告しておくメリットは小さくありません。

純損失は何年繰り越せますか?

青色申告者の場合、損益通算をしても控除しきれなかった純損失を、赤字が出た年の翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年分の所得から差し引けます(国税庁タックスアンサーNo.2070)。3年以内に使いきれなかった分は切り捨てになります。特定非常災害による一定の損失は、繰越期間が延長される場合があります。

繰越控除と繰戻し還付はどちらを使うべきですか?

前年に利益が出て所得税を納めていた人は、繰戻し還付で前年分の税金が戻る選択肢があります(前年・本年とも青色申告が条件)。前年が赤字や開業初年度で前年分の納税がない場合は、戻る税金がないため翌年以降に向けた繰越控除を使います。前年と翌年以降の見通し次第なので、どちらが有利かを比べて選びます。

白色申告でも赤字を繰り越せますか?

純損失の繰越しは国税庁が青色申告のメリットとして挙げている制度で、白色申告では一般的な事業の赤字を繰り越すことは原則できません。変動所得の損失や被災事業用資産の損失など一部の例外に限られるとされています。赤字を将来に持ち越せるようにしたい場合は、青色申告にしておくのが確実です。判断に迷う場合は税務署に確認してください。