家族への給与で節税|青色事業専従者給与と事業専従者控除の使い方【フリーランス】

配偶者や親など、家族に事業を手伝ってもらっているフリーランス・個人事業主は少なくありません。原則として、生計を一にする家族に支払った給与は経費にできませんが、一定の手続きと要件を満たせば、家族への給与を必要経費に算入できる制度があります。それが青色申告の「青色事業専従者給与」と、白色申告の「事業専従者控除」です。この記事では、両者の違い、専従者として認められる要件、届出書の提出期限、そして配偶者控除・扶養控除との関係を、国税庁の情報をもとに整理します。

この制度は「家族に手伝ってもらっている実態」があることが前提です。実際には働いていない家族に給与を払ったことにする、相場とかけ離れた高額な給与を払うといった使い方は認められません。給与の額は、仕事の内容や従事時間に見合った妥当な水準にする必要があります。

青色申告と白色申告で扱いが違う

家族への給与を経費にする仕組みは、青色申告か白色申告かで大きく異なります。青色申告の「青色事業専従者給与」は、届け出た範囲内であれば実際に支払った金額を経費にできるのに対し、白色申告の「事業専従者控除」は金額に上限のある定額のみという違いがあります。

青色事業専従者給与と事業専従者控除の比較(国税庁タックスアンサーNo.2075)
比較する点青色事業専従者給与(青色申告)事業専従者控除(白色申告)
経費にできる金額届け出た金額の範囲内で、労務の対価として相当な額下記いずれか低い金額(定額)
金額の上限実態に見合えば上限なし(届出の範囲内)配偶者86万円/配偶者以外の親族は1人50万円
事前の届出「青色事業専従者給与に関する届出書」が必要不要(確定申告書に記載)
金額のもう一つの基準控除前の事業所得等を「専従者数+1」で割った額との低い方

青色申告は事前の届出と記帳の手間がかかる一方、家族への給与を実額で経費にできるため、節税の幅が大きくなります。青色申告そのものの仕組みやメリットは青色申告と白色申告の違いで詳しく解説しています。

「専従者」として認められる要件

青色事業専従者として給与を経費にするには、その家族が次の要件をすべて満たす必要があります(国税庁タックスアンサーNo.2075)。

  • 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • その年を通じて6か月を超える期間、その事業にもっぱら従事していること

「もっぱら従事」とは、その事業の仕事に専念していることを指します。たとえば他社にフルタイムで勤めている、昼間は学校に通う学生であるといった場合は、原則として専従者には当たりません。白色申告の事業専従者も、生計を一にする親族で12月31日現在15歳以上、6か月を超えてもっぱら従事していることという、同様の考え方で判定されます。

専従者として給与の支払を受ける人、または白色申告で事業専従者となった人は、その事業主の配偶者控除・扶養控除の対象にはできません(国税庁タックスアンサーNo.2075)。家族を専従者にすると、専従者給与(または専従者控除)と配偶者控除・扶養控除を両取りはできない、という点に注意してください。どちらが有利かは、給与の額や家族の状況によって変わります。

青色事業専従者給与の届出書と提出期限

青色事業専従者給与を経費にするには、あらかじめ「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。提出期限は次のとおりです。

「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出期限(国税庁)
ケース提出期限
通常青色事業専従者給与額を経費にしようとする年の3月15日
その年の1月16日以後に新たに開業した場合開業した日から2か月以内
その年の1月16日以後に新たに専従者がいることとなった場合専従者がいることとなった日から2か月以内

届出書には、専従者の氏名・続柄・仕事の内容・給与の金額(または給与の上限)などを記載します。実際に支払う給与は、この届け出た金額の範囲内で、かつ仕事の内容に照らして相当な額であることが求められます。届出をせずに支払った給与や、届け出た金額を超える部分は経費にできない点に注意してください。開業届とあわせて出す場合は開業届の書き方チェックリストも参考にしてください。

白色申告の事業専従者控除の金額

白色申告の場合は事前の届出は不要で、確定申告書に記載することで「事業専従者控除」を受けられます。控除額は次の2つのうちいずれか低い金額です(国税庁タックスアンサーNo.2075)。

  1. 事業専従者が配偶者なら86万円、配偶者以外の親族なら1人につき50万円
  2. この控除をする前の事業所得等の金額を「事業専従者の数+1」で割った金額

たとえば事業専従者が配偶者1人で、控除前の事業所得が300万円なら、(1)は86万円、(2)は300万円÷(1+1)=150万円となり、低い方の86万円が控除額になります。一方、控除前の事業所得が150万円なら、(2)は150万円÷2=75万円となり、こちらが低いため75万円が上限になります。所得が小さいと、定額の上限まで使えないことがある点に注意してください。

青色事業専従者給与でどれくらい節税になる?(計算例)

青色事業専従者給与を出したときに事業主側で軽くなる税額は、ざっくり「支払った給与額 × 事業主本人の限界税率(所得税+住民税)」でつかめます。給与のぶんだけ事業主の課税所得が下がるためです。所得税の税率は課税される所得金額の帯によって変わり(国税庁タックスアンサーNo.2260の速算表)、住民税の所得割は標準税率10%(総務省)です。たとえば配偶者に年間120万円(月10万円)を専従者給与として支払う場合、事業主側の軽減額の目安は次のようになります。

配偶者に年120万円を専従者給与にした場合の事業主側の税・住民税の軽減目安(国税庁No.2260の速算表+住民税10%で試算)
事業主本人の課税される所得金額の帯所得税率+住民税率120万円ぶんの軽減額の目安
195万円超〜330万円以下10%+10%=20%約24万円
330万円超〜695万円以下20%+10%=30%約36万円
695万円超〜900万円以下23%+10%=33%約39.6万円
上表は事業主側だけを見た目安です。実際には差し引きで考える必要があります。①配偶者を専従者にすると、その配偶者について配偶者控除(所得税は一般で38万円・国税庁タックスアンサーNo.1191)が使えなくなるため、所得税率20%の人なら 38万円×20%=約7.6万円 ぶんの減税効果を失います(住民税で配偶者控除が使えなくなる分の負担増もあります)。②専従者(配偶者)側にも給与所得が生じ、給与の額によっては配偶者本人に所得税・住民税がかかったり、社会保険の扶養から外れたりすることがあります(配偶者控除と収入の壁を参照)。

これらを差し引いても、家族が実際に事業に従事しているなら、専従者給与のほうが世帯全体の手取りでは有利になるケースが少なくありません。ポイントは、給与を労務の対価として相当な範囲に収めつつ、配偶者側の「扶養の壁」も含めて世帯全体で試算することです。給与を含めた記帳や源泉徴収の集計は、会計ソフトを比較して自分に合うものを選ぶと負担を抑えられます。

源泉徴収や手続きの実務メモ

  • 青色事業専従者に給与を支払う場合、金額によっては源泉徴収が必要になります。給与から天引きする所得税の考え方は源泉徴収の計算方法も参考になります
  • 従業員(家族を含む)に給与を支払うことになったら、税務署への「給与支払事務所等の開設届出書」の提出が必要です
  • 支払った給与は帳簿に記録し、賃金台帳や出勤の記録など、実際に働いている根拠を残しておくと安心です。記帳は会計ソフトを使うと効率的に行えます
  • 家族への給与も、仕事の内容・従事時間に見合った妥当な金額にすること(高すぎる給与は否認されることがあります)

家族に支払う給与を含めて、年間の手取りがどう変わるかは手取り計算ツールで試算できます。経費全体の整理はフリーランスの経費一覧チェックリスト、確定申告の流れはフリーランスの確定申告の流れにまとめています。給与の支払いを含めた日々の記帳を効率化したい方は会計ソフト3社の料金プラン比較もあわせてご覧ください。

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よくある質問

家族に払った給与はそのまま経費にできますか?

原則として、生計を一にする家族への給与は経費にできません。ただし青色申告で「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、専従者の要件を満たす家族に労務の対価として相当な額を支払う場合は経費にできます。白色申告でも事業専従者控除(配偶者86万円、配偶者以外1人50万円が上限)の形で一定額を控除できます。いずれも、その家族が実際に事業に従事している実態が前提です。

青色事業専従者給与の届出はいつまでに出しますか?

経費にしようとする年の3月15日までが基本の期限です。その年の1月16日以後に新たに開業した場合や、新たに専従者がいることとなった場合は、その開業日または専従者がいることとなった日から2か月以内に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出します。届出をせずに支払った給与は経費にできません。

配偶者を専従者にすると配偶者控除も受けられますか?

受けられません。青色事業専従者として給与の支払を受ける人や、白色申告で事業専従者となった人は、その事業主の配偶者控除・扶養控除の対象にはできません。専従者給与(または専従者控除)と配偶者控除・扶養控除は両取りできないため、どちらが有利かを給与の額や家族の状況に応じて比較する必要があります。

青色事業専従者給与でいくら節税できますか?

事業主側で軽くなる税額の目安は「支払った給与額 × 事業主本人の限界税率(所得税+住民税)」です。たとえば配偶者に年120万円を支払い、事業主の課税される所得金額が330万円超695万円以下の帯にある場合、所得税20%(国税庁No.2260の速算表)+住民税10%=30%で、約36万円が軽くなる計算になります。ただし配偶者を専従者にすると配偶者控除(所得税は一般で38万円)が使えなくなり、専従者側にも給与所得が生じるため、世帯全体で差し引きして判断する必要があります。

パートで他社にも勤めている家族を専従者にできますか?

専従者は「その年を通じて6か月を超える期間、その事業にもっぱら従事していること」が要件です。他社にフルタイムで勤めているなど、その事業に専念しているといえない場合は、原則として専従者には当たりません。短時間のパートなど従事の状況によって判断が分かれることもあるため、迷う場合は税務署に確認してください。