事業所得と雑所得の違い|副業の所得区分と帳簿のポイント【フリーランス】

フリーランスや副業の確定申告で迷いやすいのが、自分の収入を事業所得として申告するのか、雑所得として申告するのかという「所得区分」です。同じ金額の収入でも、どちらに区分するかで使える特例や税額が変わることがあります。この記事では、両者の違い、税金面でどう得をするのか(あるいはしないのか)、そして国税庁が示している判定の考え方を、フリーランス・個人事業主・副業会社員向けに整理します。

所得区分は「自分が好きに選べるもの」ではなく、活動の実態に応じて判定されるものです。事業所得が有利だからといって、実態の伴わない収入を事業所得として申告できるわけではない点に注意してください。最終的な判断に迷う場合は、税務署や税理士に確認することをおすすめします。

事業所得と雑所得は何が違うのか

雑所得とは、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得のいずれにも当たらない所得をいいます(国税庁タックスアンサーNo.1500)。雑所得はさらに「公的年金等」「業務に係るもの」「その他」の3つに区分され、副業やフリーランス的な営利活動の収入は、事業所得に当たらない場合は業務に係る雑所得に区分されます。

事業所得と業務に係る雑所得の主な違い(一般的な整理)
比較する点事業所得業務に係る雑所得
青色申告特別控除(最大65万円など)要件を満たせば使える使えない
赤字を他の所得と相殺(損益通算)給与など他の所得と相殺できる他の所得とは相殺できない(雑所得内のみ)
赤字の繰越し(純損失の繰越控除)青色申告なら最大3年繰り越せる繰り越せない
青色事業専従者給与・少額減価償却資産の特例(40万円未満)青色申告で使える使えない
必要経費の計上できるできる(収入を得るために直接要した費用など)
記帳・帳簿書類の保存義務がある前々年の収入が一定額を超えると保存義務(後述)

ポイントは、節税につながる特例の多くが事業所得側にあることです。とくに青色申告特別控除(最大65万円)や、赤字を給与所得などと相殺できる損益通算は、雑所得では使えません。青色申告そのものの仕組みは青色申告と白色申告の違いで詳しく解説しています。

副業が赤字のとき、税額はどれくらい変わる?(損益通算の具体例)

事業所得と雑所得の差がもっとも金額に表れやすいのが、副業が赤字になった年です。損益通算とは、一定の所得で生じた損失を他の所得から差し引ける仕組みで、国税庁タックスアンサーNo.2250によると、損益通算できる損失は不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つに限られ、雑所得の損失は損益通算できないと明記されています。副業が事業所得なら赤字を給与所得と相殺できますが、雑所得だと赤字はそのまま切り捨てになります。

具体例で見てみましょう。会社の給与所得(給与所得控除後)が課税される所得金額で450万円(所得税の速算表で税率20%の帯)の会社員が、副業で30万円の赤字を出したケースです。

給与の課税所得450万円(所得税率20%の帯)の会社員が副業で30万円の赤字を出した場合の比較
項目事業所得の場合業務に係る雑所得の場合
副業の赤字30万円の扱い給与所得と損益通算できる損益通算できず切り捨て
課税される所得金額450万 − 30万 = 420万円450万円(変わらない)
所得税の軽減(30万 × 20%)60,000円0円
住民税の軽減(30万 × 標準税率10%)30,000円0円
負担の差(合計)約90,000円 軽くなる0円
上の所得税率は国税庁タックスアンサーNo.2260の速算表(課税所得330万円超695万円以下は20%)、住民税は総務省が示す所得割の標準税率10%を用いた概算です。実際の軽減額は所得税率の帯・自治体の税率・扶養状況によって変わります。また、これは副業に事業としての実態があり事業所得と認められることが前提で、雑所得の損失は損益通算できません。黒字の年は損益通算の論点は関係なく、その場合は青色申告特別控除や損益通算以外の特例(少額減価償却資産の特例など)の有無で差が出ます。

つまり同じ「30万円の赤字」でも、事業所得なら年9万円前後の還付・減税につながり、雑所得なら0円という差が出ることがあります。ただしこれは実態が事業と認められる場合の話で、区分を有利なほうに恣意的に選べるわけではありません。区分の判定基準は次の見出しで整理します。

どちらに区分されるか(国税庁の考え方)

事業所得と業務に係る雑所得の区分は、その所得を得るための活動が社会通念上「事業」と言える規模・実態かで判定されます。形式的な金額の線引きで自動的に決まるのではなく、継続性・反復性、営利性、人的・物的設備の有無、その活動にかける時間や労力などを総合して判断されるのが基本です。

そのうえで国税庁は、令和4年分以降の取扱いとして、帳簿書類を作成・保存しているかどうかを判定の重要な目安として示しています。おおまかには、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得と取り扱われ、保存がない場合は業務に係る雑所得と推定される、という整理です。ただし、帳簿を保存していても、収入がごくわずかで例年赤字が続き、改善の取組も見られないといった場合には、雑所得と判定されることがあるとされています。

国税庁は、その活動を「収入金額300万円を超えるような規模で行っている場合には、帳簿書類の保存がない事実のみで所得区分を判定せず、事業所得と認められる事実があれば事業所得として取り扱う」とする考え方を示しています。300万円はあくまで取扱い上の目安であり、「300万円を超えれば自動的に事業所得」「下回れば必ず雑所得」という基準ではない点に注意してください。

言い換えると、きちんと記帳して帳簿を保存しておくことが、事業所得として扱われるための実務上の大きなポイントになります。会計ソフトで日々の取引を記録しておけば、帳簿の作成・保存の要件を満たしやすくなります。どのソフトにするか迷う場合はクラウド会計ソフトの選び方で主要3社を比べられます。経費の付け方はフリーランスの経費一覧チェックリスト、科目選びは勘定科目の選び方も参考にしてください。

雑所得でも必要になる「書類の保存」と「添付」

「雑所得だから帳簿はいらない」と考えるのは早計です。業務に係る雑所得がある人については、前々年分の収入金額に応じて、次のような義務があります(国税庁タックスアンサーNo.1500)。

業務に係る雑所得がある場合の保存・添付(前々年分の収入金額で判定)
前々年分の業務に係る雑所得の収入金額必要になること
300万円以下現金預金取引等関係書類の保存義務は課されない
300万円超現金預金取引等関係書類(請求書・領収書など)を5年間保存する必要がある
1,000万円超確定申告書に、総収入金額・必要経費を記載した書類(収支内訳書など)を添付する必要がある

つまり、ある程度の規模の副業収入があれば、雑所得であっても書類の保存は避けられません。どうせ記録を残すなら、事業所得として認められる水準の帳簿づけをしておくほうが、特例も使えて一石二鳥になりやすいといえます。電子データでの保存ルールは電子帳簿保存法への対応にまとめています。

事業所得として申告したいときの実務チェック

  • 開業届と青色申告承認申請書を提出している(青色申告特別控除を使うには事前の承認が必要)
  • 日々の取引を記帳し、帳簿書類を保存している(会計ソフトの利用で要件を満たしやすい)
  • 継続的・反復的に活動しており、単発・一時的な収入ではない
  • 営利性があり、収入を得るための取組(営業・改善など)を行っている
  • 売上・経費の根拠となる請求書・領収書を整理して残している
  • 私用と兼用の支出は家事按分の割合と根拠を記録している

開業届の出し方は開業届の書き方チェックリスト、確定申告全体の流れはフリーランスの確定申告の流れで確認できます。所得区分が決まったら、手取りがいくらになるかは手取り計算ツールで試算できます。

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よくある質問

副業の収入はいくらから事業所得になりますか?

「いくら以上なら事業所得」という金額の基準は法律で一律に決まっていません。事業所得かどうかは、継続性・営利性・規模など活動の実態を社会通念に照らして判定します。国税庁は帳簿書類の保存があるかどうかを重要な目安とし、収入金額300万円超の規模であれば帳簿保存がない事実だけで雑所得とは判定しない、という取扱いを示しています。300万円はあくまで目安で、自動的に区分が決まる金額ではありません。

事業所得と雑所得では、どちらが税金面で有利ですか?

一般には、青色申告特別控除(最大65万円)や、赤字を給与など他の所得と相殺できる損益通算、赤字の3年繰越しが使える事業所得のほうが、特例の面では有利になりやすいです。ただしこれらは事業所得として認められ、かつ青色申告の要件を満たすことが前提です。実態が伴わないのに有利だからと事業所得を選ぶことはできません。

雑所得なら帳簿はつけなくてよいですか?

業務に係る雑所得でも、前々年分の収入金額が300万円を超える場合は、請求書・領収書などの現金預金取引等関係書類を5年間保存する義務があります。さらに1,000万円を超える場合は、確定申告書に収支内訳書などの添付が必要です。規模が大きくなるほど、雑所得でも記録の保存は避けられません。

副業で赤字が出たら、事業所得と雑所得で税金はどれくらい変わりますか?

損益通算(赤字を他の所得と相殺できる仕組み)の対象は不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つに限られ、雑所得の損失は損益通算できません(国税庁タックスアンサーNo.2250)。たとえば給与の課税所得450万円(所得税率20%の帯)の会社員が副業で30万円の赤字を出した場合、事業所得なら給与所得と相殺でき、所得税6万円+住民税3万円=約9万円の負担減につながります。雑所得だと赤字は切り捨てで軽減は0円です。ただし事業としての実態が前提で、有利だからと区分を選べるわけではありません。

会社員の副業は必ず雑所得ですか?

会社員の副業だからといって、自動的に雑所得になるわけではありません。副業であっても、継続的・反復的に営利目的で行い、帳簿書類を作成・保存しているなど事業としての実態があれば、事業所得と認められる場合があります。逆に、本業があっても規模が小さく単発的な収入であれば業務に係る雑所得に区分されることが多いです。判断に迷う場合は税務署に相談してください。