電子帳簿保存法の対応|レシートはスマホ撮影でOK?フリーランスがやること

「メールでもらったPDFの請求書はどう保存すればいいの?」「紙のレシートはスマホで撮って捨てていい?」——電子帳簿保存法をめぐってフリーランスがつまずきやすいのが、この2つの区別です。実は、両者はまったく別のルールで扱われます。一方は全員が必ず守る義務、もう一方は任意で使える便利な制度です。この記事では、フリーランス・個人事業主が最低限おさえるべき対応を、国税庁の資料をもとに整理します。

この記事は2026年6月時点の国税庁の公開資料(電子取引データの保存方法リーフレット〔令和6年1月以降用〕、スキャナ保存リーフレット)にもとづいています。制度の詳細や最新の取扱いは、国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」で確認してください。

まず区別する|「データでもらった」か「紙でもらった」か

電子帳簿保存法には複数の制度がありますが、フリーランスにとっての分かれ道は「その書類をどうやって受け取ったか」です。受け取り方によって、対応が義務か任意かが変わります。

受け取り方で変わる対応
受け取り方対応義務 / 任意
データでもらったメール添付のPDF請求書、Web明細、ネット通販の領収書電子取引データの保存(そのデータを保存)義務
紙でもらった店頭で受け取った紙のレシート・領収書紙のまま保存(または任意でスキャナ保存)紙保存は従来どおり / スキャナ保存は任意
よくある誤解は「データでもらった領収書をプリントアウトして紙で保存すればよい」というもの。データでやりとりしたものは、原則としてデータのまま保存する必要があります。逆に、紙でもらったものをわざわざデータ化する義務はありません。

【義務】電子取引データの保存|ここだけは必ず対応

申告所得税の帳簿・書類を保存する義務がある人(=確定申告をするフリーランス)が、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやりとりした場合、その電子取引データを保存しなければなりません。令和6年(2024年)1月以降にやりとりするデータが対象で、受け取った場合だけでなく、自分が送った場合も保存します。

  • 対象: メール添付のPDF請求書・領収書、クラウド請求書サービスで受発行した書類、ネット通販の購入明細・領収書、アプリ決済の利用明細など、データでやりとりしたもの
  • 対象外: 紙でやりとりした書類(これをデータ化する義務はない)
  • 保存するファイル形式は問わない: PDFに変換したものや、スクリーンショットでも問題ないとされています

保存にあたっては、次の3つのポイントを満たす必要があります。

  1. 改ざん防止のための措置をとる
  2. 「日付・金額・取引先」で検索できるようにする
  3. ディスプレイやプリンタ等を備え付ける(画面で確認・印刷できる状態にしておく)

改ざん防止の措置|お金をかけずに済む方法もある

改ざん防止の措置というと専用システムが必要に思えますが、国税庁は「改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る」というシステム費用をかけずに導入できる方法も認めています。規程のサンプルは国税庁ホームページに掲載されています。このほか、タイムスタンプを付与する方法や、訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムで授受・保存する方法もあります。

改ざん防止の措置の選択肢
方法費用感向いている人
事務処理規程を定めて守る無料(サンプル流用)まずコストをかけたくない人
訂正・削除の履歴が残る会計ソフト等で保存ソフト利用料会計ソフトをすでに使っている人
タイムスタンプを付与サービス利用料取引量が多く運用を自動化したい人

検索要件|売上5,000万円以下なら大幅にラクになる

「日付・金額・取引先」での検索は、専用システムがなくても次の簡易な方法で対応できます。

  • ① 規則的なファイル名を付ける: ファイル名を「日付_金額_取引先」の形で統一し、1つのフォルダに集約する(例: `20260619_110000_株式会社○○.pdf`)。これでフォルダの検索機能が使える
  • ② 表計算ソフトで索引簿を作る: Excel等で「日付・金額・取引先」の一覧を作り、表計算ソフトの検索機能で探せるようにする。索引簿のサンプルも国税庁HPにあります
さらに、基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の場合は、税務調査で電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件(上記①②も含む)への対応がすべて不要になります。この基準はもともと売上高1,000万円以下でしたが、令和5年度税制改正で5,000万円以下に拡大され、令和6年(2024年)1月1日以後にやりとりするデータから適用されています。多くのフリーランスはこの基準に当てはまります。ただし「保存しなくてよい」という意味ではなく、データ自体は改ざん防止の措置をとって保存しておく必要があります。

システムの整備が間に合わないなど「相当の理由」がある場合には、猶予措置があります。データを保存しつつ、プリントアウトした書面を提示・提出でき、ダウンロードの求めに応じられれば、検索要件などを満たせなくても認められます。ただし、システムが整っているのに資金繰りや人手不足といった特段の事情なく保存していない場合は、相当の理由とは認められないとされています。

対応しないとどうなる?|不正があると重加算税が10%加重される

単に保存を忘れていた場合の取扱いは個別の事情によりますが、電子取引データを保存しない・改ざんするといった行為には、通常より重いペナルティが用意されています。令和3年度税制改正で、スキャナ保存した書類や電子取引データについて隠蔽・仮装(改ざんや不正)があった場合、その事実により生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が設けられました(令和4年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用)。

たとえば、電子取引データを改ざんして所得を隠したことによる追徴の本税が100万円だった場合、通常の重加算税に加えて10%=10万円が上乗せされる計算です。反対に、一定の帳簿を「優良な電子帳簿」の要件を満たして電子保存し、あらかじめ届出書を提出している場合は、後から過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減される「アメ」の措置もあります(隠蔽・仮装があった場合を除く)。日頃から正しくデータを残しておくことは、こうしたペナルティを避けることにも直結します。

【任意】スキャナ保存|紙のレシートはスマホ撮影で残せる

紙で受け取った領収書やレシートは、従来どおり紙のまま保存すれば問題ありません。そのうえで、紙の保管を減らしたい人は「スキャナ保存」制度を任意で使えます。これは、紙の書類をスキャナで読み取った電子データで保存できる仕組みで、要件を満たせばスマホやデジカメで撮影したものでもOKです。

  • 対象書類: 取引相手から受け取った書類(契約書・請求書・領収書など)と、自分が作成して交付する書類の写し
  • 「スキャナ」の範囲: 書面を電子データに変換する入力装置で要件を満たすもの。スマホ・デジカメも対象
  • 事前手続き: 原則不要。令和4年1月以降は税務署長の承認も不要で、任意のタイミングで、書類の種類ごとに始められます
スキャナ保存の主な要件(国税庁リーフレットより)
要件内容
解像度200dpi相当以上(A4サイズで約387万画素相当)
色調カラー(赤・緑・青それぞれ256階調=24ビットカラー)以上。一般書類はグレースケールも可
入力期間受領後おおむね7営業日以内(事務処理規程を定めれば最長2か月+おおむね7営業日以内)
タイムスタンプ入力期間内に付与。入力日時を確認できるシステムを使えば代替可
訂正・削除の管理訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムを使う
検索機能日付・金額・取引先で検索可。ダウンロードの求めに応じる場合は範囲・組合せ検索は不要

ここでいう「重要書類」は契約書・納品書・請求書・領収書など資金や物の流れに直結するもの、「一般書類」は見積書・注文書・検収書など直結しないもので、一般書類はグレースケール保存などが認められます。要件を満たしてスキャナ保存をすれば、紙の原本を保管し続ける必要はなくなります(読み取りが鮮明にできているかを確認してから処分すると安心です)。

スキャナ保存は要件がやや細かいため、無理に導入する必要はありません。市販の会計ソフト・経費精算サービスには、これらの要件(JIIMA認証)を満たす製品もあり、撮影から保存までをアプリで完結できます。まずは「データでもらったものの保存(義務)」を固め、紙の電子化は余力があれば、という順番が現実的です。電子帳簿保存に対応した会計ソフトの比較も参考になります。

フリーランスがやることチェックリスト

  • メールやWebでもらった請求書・領収書のPDFを、捨てずにフォルダへ保存している
  • ファイル名を「日付_金額_取引先」で統一する、または索引簿を作っている(売上5,000万円以下なら検索要件は省略可)
  • 改ざん防止のため、事務処理規程を定めるか、履歴が残る会計ソフトで保存している
  • 自分が送った請求書・見積書のデータも保存している
  • 紙のレシートは紙のまま保存(電子化したい場合のみスキャナ保存の要件を確認)
  • 保存した帳簿・書類は原則7年保存する(青色申告の場合)

電子取引データの保存は、会計ソフトを使うと「改ざん防止」「検索」「保存」をまとめて満たしやすくなります。クラウド会計ソフトなら、銀行口座やカードの明細連携とあわせてデータが自動で整理されるため、確定申告前の手間も減らせます。口座・カードの分け方は事業用口座・カードの分け方、経費にできる支出はフリーランスの経費一覧チェックリストも参考にしてください。

よくある質問

メールで届いたPDFの請求書は、印刷して紙で保存すればいいですか?

データでやりとりしたものは、原則としてデータのまま保存する必要があります(電子取引データの保存)。印刷した紙だけでの保存は原則認められません。PDFをフォルダに保存し、改ざん防止の措置(事務処理規程や履歴の残るソフト等)をとってください。

紙のレシートはスマホで撮影して捨てていいですか?

スキャナ保存の要件(解像度200dpi相当以上・カラー・入力期間内のタイムスタンプ等)を満たしてスマホ撮影・保存すれば、紙の原本を処分できます。要件を満たさない場合は紙のまま保存します。なお紙の書類をデータ化する義務はないため、紙のまま保管しても問題ありません。

検索できるようにするのが大変です。何か方法はありますか?

基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の場合は、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件への対応が不要になります。多くのフリーランスが当てはまります。それでもファイル名を「日付_金額_取引先」で統一しておくと、自分が後で探すときに便利です。

改ざん防止のために有料システムを買う必要がありますか?

必須ではありません。国税庁が公開する「事務処理規程」のサンプルを使って規程を定めて守る方法なら、システム費用をかけずに対応できます。会計ソフトを使う場合は、訂正・削除の履歴が残るソフトであれば改ざん防止の要件を満たしやすくなります。

対応していないと、どうなりますか?

保存要件を満たさない場合の取扱いは個別の事情によります。システム整備が間に合わない等の「相当の理由」があり、書面の提示・データのダウンロードに応じられれば猶予措置の対象になり得ます。ただし電子取引データやスキャナ保存書類を隠蔽・仮装した場合は、その分の重加算税が10%加重される点に注意が必要です(本税100万円なら10万円上乗せの計算)。まずはデータを捨てずに保存することが最優先です。詳細は国税庁の特設サイトや税務署で確認してください。