請求書の消費税と源泉徴収、計算の順序|端数処理と「税抜×源泉」の正しい手順

源泉徴収の対象は原則として税込金額です。請求書等で報酬額と消費税額を明確に区分していれば、税抜の報酬額だけを対象にできます。以下では、この区分記載をして税抜を対象にする場合の「①本体を確定 → ②消費税を計算 → ③源泉徴収税額を計算 → ④差引請求額を出す」手順を説明します。金額を自動で計算したい方は請求書作成ツール、税込・税抜の割り戻しは消費税の計算ツールが使えます。

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源泉徴収の計算前に確認する請求書の記載
請求書等の記載源泉徴収の対象額
税込の総額だけで、報酬と消費税額を区分していない原則どおり税込金額。手元で割り戻しただけでは税抜計算の条件を満たさない
報酬額と消費税額を明確に区分している税抜の報酬額だけを対象にできる。税抜での計算が義務になるわけではない
2026年9月20日確認:国税庁 No.6929「消費税等と源泉所得税および復興特別所得税」、No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」。以下は源泉徴収の対象となる報酬の計算例です。税込・税抜の判断と、そもそも源泉徴収が必要な取引かの判断は分けて確認してください。

インボイス未登録・免税でも、税抜を源泉徴収の対象にできる?

インボイス未登録の人でも、請求書等で報酬額と消費税等の額を明確に区分していれば、報酬額だけを源泉徴収の対象にできます。適格請求書発行事業者ではない免税事業者の請求書等も、この扱いから除外されません。ただし、そもそも源泉徴収が必要な報酬・支払者であることが前提です。登録の有無だけで源泉税をゼロにしたり、必ず税込計算になると判断したりしないでください。

未登録の請求書で分けて確認する3つの判断
確認すること判断への影響
報酬と支払者が源泉徴収の対象か対象外の取引なら、この源泉税の計算手順を当てはめない。職種だけでなく業務内容と支払者を確認する
請求書等で報酬額・消費税等の額を明確に区分したか区分されていれば、未登録でも報酬額だけを源泉対象にできる。税込総額を手元で割り戻すだけでは足りない
適格請求書を発行できるか・買手が仕入税額控除できるか源泉対象額とは別の消費税の判断。買手の控除割合を源泉税率や報酬額に掛けて計算しない
2026年10月4日確認:国税庁 No.6929(令和8年4月1日現在)の注記と、「インボイス制度開始後の報酬・料金等に対する源泉徴収」(令和3年12月9日)の2に基づく整理です。この扱いは、免税事業者に消費税等の別建て請求を義務づけたり、契約金額への上乗せを認めたりするものではありません。合意した請求額と記載を確認し、源泉対象額を決めた後で源泉徴収ツールに入力してください。ツールは登録・対象取引の判定を自動では行いません。

計算の順序(消費税を区分し、税抜を源泉徴収の対象にする場合)

1枚の請求書での計算ステップ
手順計算することポイント
①税抜(本体)の金額を税率ごとに合計する10%対象と8%対象が混在するなら分けて合計
②消費税を計算する適格請求書では、税率ごとの合計に税率を掛け、1請求書・税率ごとに1回だけ端数処理(No.6371)
③源泉徴収税額を計算する本体と消費税を区分してあれば、税抜(本体)のみを対象にできる(No.6929)。1円未満は切捨て
④差引請求額を出す本体 + 消費税 − 源泉徴収税額 = 実際の振込額
なぜ順序が大事? 源泉徴収税額は「税抜(本体)に対して10.21%」で計算するのが有利ですが、これは請求書で本体価格と消費税額を明確に区分している場合に限られます。区分せず税込金額だけを書くと、税込全体が源泉徴収の対象になり、源泉される金額が増えます(最終的には確定申告で精算されますが、その分だけ入金が先に減ります)。国税庁 No.6929 に「請求書等に報酬・料金等の金額と消費税等の額とが明確に区分されている場合には、消費税等の額を除いた報酬・料金等の金額のみを源泉徴収の対象としても差し支えありません」と示されています。

どちらを先に計算するか迷うのは、消費税と源泉徴収で「かける対象」が違うからです。消費税は本体価格にかかり、源泉徴収は本体価格と消費税を区分して書けば本体だけを対象にできます。つまり順序で迷ったら、まず本体を確定させ、そのうえで消費税と源泉徴収をそれぞれ本体から計算する、と覚えておくと迷いません。区分して書けているかどうかが、その場で差し引かれる金額を左右する分かれ目になります。

数値例:原稿料55,000円(税抜)の請求書

原稿料・デザイン料など源泉徴収の対象になる報酬(源泉徴収の対象になる報酬・ならない報酬)で、本体55,000円(税抜・10%対象)を請求するケースで手順どおり計算します。

本体55,000円(税抜)の計算
手順金額計算
① 本体(税抜)55,000円—
② 消費税(10%)5,500円55,000 × 10% = 5,500
③ 源泉徴収税額5,615円55,000 × 10.21% = 5,615.5 →(1円未満切捨て)5,615
④ 差引請求額54,885円55,000 + 5,500 − 5,615 = 54,885
小計(税抜)       55,000円 消費税(10%)       5,500円 源泉徴収税額(10.21%) ▲5,615円 差引ご請求金額      54,885円

源泉徴収税額は「復興特別所得税込みで10.21%」(100万円を超える部分は20.42%)です。計算式のしくみは源泉徴収税の計算方法で、金額を入れるだけの計算は源泉徴収の計算ツールで確認できます。

適格請求書の消費税の端数処理は「税率ごとに1回」

適格請求書(インボイス)に記載する消費税額等に1円未満の端数が出るときは、一の適格請求書につき、税率ごとに1回だけ端数処理を行います(国税庁 No.6371)。切上げ・切捨て・四捨五入のどれを使うかは事業者が任意に選べますが、商品(明細)ごとに端数処理して合計する方法は認められていません。

適格請求書でやりがちな間違い: 明細ごとに消費税を計算して足し込むと、正しい金額と1円ずれることがあります。たとえば税抜6,185円と6,165円(どちらも10%対象)を1枚の適格請求書に載せる場合——正しくは合計12,350円 × 10% = 1,235円。一方、明細ごとに切り捨てて足すと「618円 + 616円 = 1,234円」となり、1円ずれます。適格請求書の消費税額等は明細を税率ごとに合計してから、最後に1回だけ端数処理します。未登録の請求書に、この適格請求書の義務をそのまま当てはめるものではありません。
  • 本体価格(税抜)と消費税額を区分して記載している(源泉を税抜に対して計算するための条件)
  • 適格請求書では、消費税は税率ごとに合計してから1回だけ端数処理している(明細ごとの積み上げにしていない)
  • この例のように区分記載し、対象額が100万円以下の原稿料等を税抜で計算する場合は、税抜(本体)× 10.21%で計算し、1円未満を切り捨てている
  • 差引請求額=本体 + 消費税 − 源泉徴収税額 になっている
  • インボイス発行事業者なら登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額も記載している(インボイスの記載事項)

税込金額しか分からないとき(割り戻し)

取引先から「税込◯◯円で」と指定された場合、税抜に割り戻す計算と、請求書に本体・消費税額を分けて記載する作業は別です。税抜を源泉徴収の対象にするなら、割り戻した内訳を請求書等へ明確に記載してください。10%対象なら税込 ÷ 1.1 = 税抜です。以下の表は、本体と消費税額を区分して請求する場合の例です。税込総額だけの請求書のままなら、原則の税込計算になります。

税込110,000円から割り戻す例(10%対象)
項目金額計算
税込110,000円指定額
税抜(本体)100,000円110,000 ÷ 1.1
消費税(10%)10,000円110,000 − 100,000
源泉徴収税額10,210円100,000 × 10.21%
これは国税庁 No.6929 の計算例と同じ考え方です。同ページでは、税理士報酬を「110,000円」とだけ記載した場合の源泉徴収税額は11,231円(110,000 × 10.21%)ですが、「報酬100,000円・消費税等10,000円」と区分して記載すれば10,210円(100,000 × 10.21%)で済む、と示されています。税込・税抜の割り戻しは消費税の計算ツールでも確認できます。

こうした端数処理や源泉徴収の計算は、クラウド会計ソフトや請求書ソフトを使うと請求書の発行時に自動で処理されます。手作業での計算ミスや帳簿への転記漏れを避けたい場合は、会計ソフトの比較もあわせて検討してください(複式簿記での記帳や青色申告の要件も同時に満たせます)。

よくある質問

インボイス未登録の免税事業者でも、報酬だけを源泉徴収の対象にできますか?

源泉徴収が必要な報酬・支払者の取引で、請求書等に報酬額と消費税等の額を明確に区分していれば、未登録の免税事業者でも報酬額だけを対象にできます(国税庁No.6929の注記)。適格請求書であることはこの扱いの必須条件ではありません。税込総額を手元で割り戻すだけでは足りず、買手の仕入税額控除の判断や割合とも別です。

請求書で消費税と源泉徴収はどちらを先に計算しますか?

先に報酬額と消費税額を確定し、源泉徴収の対象額を確認してから税額を計算します。対象額は原則税込ですが、請求書等で報酬と消費税を明確に区分していれば税抜だけを対象にできます。最後に「本体+消費税−源泉徴収税額」で差引請求額を出します(国税庁 No.6929)。

源泉徴収は税込・税抜どちらの金額にかかりますか?

原則は消費税込みの金額が対象ですが、請求書に報酬額(税抜)と消費税額を明確に区分して記載している場合は、税抜(本体)のみを源泉徴収の対象にできます(国税庁 No.6929)。区分して書くほうが、その場で源泉される金額は少なくなります。

消費税の端数処理は明細ごとに行ってよいですか?

いいえ。適格請求書では、一の請求書につき税率ごとに1回だけ端数処理を行います。個々の商品(明細)ごとに消費税額を計算して端数処理し、それを合計する方法は認められていません(国税庁 No.6371)。切上げ・切捨て・四捨五入のどれを使うかは任意です。

源泉徴収税額の端数はどう処理しますか?

源泉徴収税額(税抜×10.21%、100万円超の部分は20.42%)に1円未満の端数が出た場合は切り捨てます。たとえば本体55,000円なら 55,000×10.21%=5,615.5円 → 5,615円です。

税込金額しか指定されていない場合はどう計算しますか?

税込総額だけの請求書なら、原則として税込金額が源泉徴収の対象です。税抜を対象にするには、割り戻すだけでなく報酬額と消費税額を請求書等に明確に区分して記載します。国税庁No.6929の例では、110,000円とだけ記載した場合は源泉11,231円、報酬100,000円・消費税10,000円と区分して税抜で計算する場合は10,210円です。

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