国民年金基金とiDeCoの違い

フリーランス(国民年金の第1号被保険者)は、会社員のような厚生年金がない分、老後に受け取る年金が国民年金だけになりがちです。その上乗せをつくる代表的な制度が国民年金基金iDeCo(個人型確定拠出年金)です。よく「どちらがいいの?」「両方入れるの?」と迷うところを、この記事では比較表で整理します。

結論から言うと、併用できます。ただし2つの掛金には合算した上限があるため、配分を考える必要があります。まず両者の性格の違いから見ていきます。

いちばんの違い: 「決まっている」か「自分で運用する」か

国民年金基金とiDeCoは、似ているようで設計思想が逆です。

  • 国民年金基金 … 加入時に選んだ型と口数で将来受け取る年金額があらかじめ決まる仕組みです。1口目は終身年金(A型・B型)から選び、終身で受け取れるのが特徴です(国民年金基金連合会「給付の種類」)。自分で運用商品を選ぶ必要はありません。
  • iDeCo … 自分で選んだ運用商品(定期預金・保険・投資信託など)で積み立て、受取額は運用成績によって増減します。運用益が非課税で再投資される一方、投資信託などでは元本割れの可能性もあります(iDeCo公式サイト)。
「受け取る額が読めるほうが安心」なら国民年金基金、「自分で運用して増やす余地がほしい」ならiDeCo、という方向性の違いがまず出発点です。どちらが得かは運用成績や寿命によって変わるため、一概には言えません。

比較表: 国民年金基金とiDeCoの違い

国民年金基金とiDeCoの比較(国民年金基金連合会・iDeCo公式サイトの公開情報より/2026年6月時点)
項目国民年金基金iDeCo(自営業者=第1号被保険者)
加入できる人国民年金の第1号被保険者など原則20歳以上65歳未満の公的年金被保険者
掛金の決め方口数制(選んだ型・口数・加入時年齢・性別で掛金が決まる)月5,000円から1,000円単位で自分で設定
掛金の上限月68,000円(iDeCoと合算)月68,000円(年額816,000円・国民年金基金や付加保険料と合算)
将来の受取額あらかじめ決まる(加入時に確定)運用成績で変動(元本割れの可能性あり)
受け取り方終身年金が基本(1口目は終身年金A型・B型)一時金・年金・併用から選ぶ(原則60歳〜75歳までに受給開始)
掛金の所得控除全額が社会保険料控除全額が小規模企業共済等掛金控除
途中での扱い原則、自己都合で任意にやめられない(掛金の減口などで調整)原則60歳まで引き出せない(掛金の停止・変更は可能)
付加年金との関係加入すると付加保険料は納められない(基金が代行)付加保険料と併用可(ただし合算枠に含まれる)

控除の「箱」が違う点もポイントです。国民年金基金の掛金は社会保険料控除、iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除として、いずれも支払った全額を所得から差し引けます。どちらも所得税・住民税の節税につながります。

併用するときの注意: 月6.8万円は「合算枠」

国民年金基金とiDeCoは併用できますが、それぞれに月6.8万円ずつではありません。国民年金基金連合会も、iDeCoにも加入している場合は「国民年金基金と確定拠出年金の掛金額の合計が68,000円」が上限と説明しています。さらに国民年金の付加保険料(月400円)も同じ枠に含まれます。

合算枠(月68,000円)の使い方の例
国民年金基金iDeCo合計
20,000円48,000円68,000円
40,000円28,000円68,000円
0円68,000円68,000円
付加年金に入っている人がiDeCoの上限を計算するときは、付加保険料(月400円)を引いた額が上限の目安になります(端数の扱いは運営管理機関で確認してください)。なお国民年金基金に入ると付加保険料は納められなくなるため、付加年金と国民年金基金は同時には使えません。

どちらを検討しやすい? 判断の目安

国民年金基金が向きやすいケース

  • 受取額が決まっているほうが安心 — 老後にいくら受け取れるかを先に確定させたい
  • 長生きに備えたい — 終身年金として一生涯受け取れる型を中心に組める
  • 運用商品を自分で選びたくない — 投資判断や金融機関選びの手間を避けたい

iDeCoが向きやすいケース

  • 運用で増やす余地を持ちたい — 運用益が非課税で再投資される点を活かしたい(その分、元本割れの可能性も受け入れる)
  • 掛金を年ごとに柔軟に変えたい — 所得の波に合わせて増額・減額・停止がしやすい
  • 受け取り方を選びたい — 一時金・年金・併用から選べる
国民年金基金は加入後に自己都合で任意脱退するのが原則できず、iDeCoは金融機関ごとに手数料がかかります。どちらも長期間お金が拘束される前提の制度なので、掛金は「当面使わないお金」の範囲で無理のない額から始めるのが基本です。

始める前のチェックリスト

  • 生活防衛資金(数か月分の生活費)は別に確保できているか — どちらも原則すぐには引き出せない
  • 今の所得で所得控除の効果が出るか — 所得が低い年は節税効果も小さくなる。下のツールで実効税率を確認
  • 付加年金・国民年金基金・iDeCoの全体配分を決めたか — 月6.8万円は合算枠。先に全体像を決めてから各制度の金額を決める
  • 国民年金の保険料を納付(または免除手続き)できているか — 上乗せ年金は国民年金を納めている(免除されている)ことが前提
  • 受取時の税金まで含めて考えたか — 受け取り方で退職所得控除・公的年金等控除など扱いが変わる

自分の税率と手取りを計算する売上と経費を入れるだけで所得税・住民税・国保・年金を一括試算。掛金を決める前の現状把握に

保険料の支払いが厳しい時期は、上乗せ年金より先に国民年金が払えないときの免除・納付猶予を確認するのが優先です。また、掛金が全額所得控除になる制度としては小規模企業共済とiDeCoの比較もあわせて検討すると、全体の配分を決めやすくなります。

制度の内容や掛金の上限は法改正で見直されることがあります。最新の掛金・加入資格・受取条件は国民年金基金連合会とiDeCo公式サイトで、税務上の取り扱いは税務署・税理士にご確認ください。本記事は2026年6月時点の各公式サイトの公開情報をもとにした一般的な解説で、特定の制度・商品の加入を勧めるものではありません。

よくある質問

国民年金基金とiDeCoは併用できますか?

併用できます。ただし掛金は別枠ではなく、国民年金基金とiDeCo(確定拠出年金)の掛金の合計で月68,000円が上限です。国民年金の付加保険料も同じ枠に含まれます。

国民年金基金とiDeCoの掛金は所得控除になりますか?

どちらも支払った掛金の全額が所得控除の対象です。控除の種類は異なり、国民年金基金は「社会保険料控除」、iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」として、所得税・住民税の計算で差し引けます。

国民年金基金とiDeCo、どちらが得ですか?

一概には言えません。国民年金基金は加入時に将来の受取額が決まる終身年金が中心で、iDeCoは自分で運用して受取額が変動します(元本割れの可能性もあります)。受取額が読める安心を取るか、運用で増やす余地を取るかという方向性の違いで選ぶのが基本です。

国民年金基金に入ると付加年金はどうなりますか?

国民年金基金に加入すると、国民年金の付加保険料は納められなくなります。基金が付加年金を代行する仕組みのためで、付加年金と国民年金基金は同時には使えません。一方、iDeCoは付加年金と併用できます(ただし掛金は合算枠に含まれます)。

国民年金基金やiDeCoは途中でやめられますか?

国民年金基金は原則として自己都合で任意に脱退することができず、掛金の減口などで調整します。iDeCoは掛金の停止や金額変更はできますが、積み立てた資産は原則60歳まで引き出せません。どちらも長期の資金拘束が前提の制度です。