国民年金が払えないときの免除・納付猶予ガイド|所得基準と追納

フリーランスは会社員と違い、国民年金保険料を自分で全額納めます。令和8年度(2026年度)の保険料は月額17,920円で、年間にすると20万円を超えます。収入が落ちた月にこの負担は重く、つい後回しにしがちですが、払えないときに絶対にやってはいけないのが「黙って未納にすること」です。免除や納付猶予を申請すれば、未納のままにするより不利益を小さくできます。順番に整理します。

保険料額は日本年金機構の公表値(令和8年度=月額17,920円)です。所得基準の金額や年金額への反映割合は法令で定められており、本記事は2026年6月時点の制度に基づきます。個別の判定は年金事務所・お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

「未納」と「免除・猶予」はまったく違う

同じ「保険料を納めていない」状態でも、手続きの有無で扱いが大きく変わります。

未納・免除・納付猶予の違い
項目未納(手続きなし)免除納付猶予
受給資格期間への算入されないされるされる
老齢基礎年金額への反映なし一部反映される反映されない
障害年金・遺族年金の保障対象外になる恐れ対象対象
あとから納められる期間過去2年分まで10年以内に追納可10年以内に追納可

ポイントは2つです。①未納だと万一のときの障害年金・遺族年金が受けられなくなる恐れがあること、②未納分は過去2年分しかさかのぼって納められないのに対し、免除・猶予を受けた期間は10年以内なら追納できること。つまり「払えないなら、まず申請」が鉄則です。

免除には4段階ある(所得で決まる)

申請免除は、本人・配偶者・世帯主それぞれの前年所得で判定されます。全額免除のほか、3段階の一部免除があります。

申請免除の所得基準(前年所得がこの範囲内なら承認)
区分前年所得の基準
全額免除(扶養親族等の数+1)× 35万円 + 32万円
4分の3免除88万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
半額免除128万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
4分の1免除168万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等
「所得」は売上ではなく、売上から必要経費や青色申告特別控除を差し引いた後の金額です。たとえば単身(扶養なし)なら全額免除の基準は35万円+32万円=67万円。所得を正しく下げるには日々の経費計上と青色申告が効きます。

一部免除(4分の3・半額・4分の1)は、残りの保険料を納めて初めて免除が有効になります。免除分を払い忘れると未納扱いに戻ってしまうため注意してください。

50歳未満なら「納付猶予」という選択肢

20歳以上50歳未満の方は、納付猶予制度を使えます。免除との大きな違いは、判定に世帯主(親など)の所得を含めず、本人と配偶者の所得だけで見る点です。親と同居していて世帯主の所得が高く免除に通らない場合でも、納付猶予なら承認される可能性があります。所得基準は全額免除と同じ「(扶養親族等の数+1)× 35万円 + 32万円」です。

学生の方は、納付猶予ではなく「学生納付特例」が対象です。本人の所得のみで判定されます。詳しい基準は日本年金機構のサイトでご確認ください。

免除・猶予を受けると年金額はどうなる

免除期間は、保険料を全額納めた場合と比べて将来の老齢基礎年金が一部に減ります(国庫負担分が反映されるため、ゼロにはなりません)。一方、納付猶予は受給資格期間には数えられますが、年金額には反映されません

免除・猶予期間が老齢基礎年金額に反映される割合(平成21年4月以降の期間)
区分全額納付を1としたときの反映割合
全額免除2分の1
4分の3免除(4分の1を納付)8分の5
半額免除(半額を納付)8分の6
4分の1免除(4分の3を納付)8分の7
納付猶予反映なし(受給資格期間にはカウント)

減った分は追納で取り戻せます。将来の手取り・年金を試算したいときは手取りツールも目安になります。

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申請のしかた(チェックリスト)

  • 申請先は「お住まいの市区町村の国民年金窓口」または「年金事務所」。マイナポータルからの電子申請も可
  • 必要なもの: 基礎年金番号がわかるもの(年金手帳・通知書など)、本人確認書類
  • 失業を理由にする場合は、雇用保険受給資格者証や離職票の写しを添付(特例免除の対象になることがある)
  • 申請は年度(7月〜翌年6月)ごと。承認は原則さかのぼって過去期間にも及ぶため、払えないと気づいたら早めに申請する
  • 全額免除・納付猶予は、一度承認されると翌年度以降も継続審査される「継続申請」を選んでおくと手間が減る
免除・納付猶予は、申請時点からさかのぼって申請できる期間に制限があります(おおむね過去2年1か月分)。心当たりのある未納期間がある場合は、放置せず窓口に相談してください。

余裕ができたら「追納」で満額に近づける

免除・納付猶予を受けた期間の保険料は、承認された月から10年以内であれば追納でき、将来の老齢基礎年金を満額に近づけられます。追納した保険料は社会保険料控除として全額が所得控除の対象になるため、所得が増えた年にまとめて追納すると節税にもなります。

免除・猶予を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされることがあります。具体的な追納額は年金事務所で確認できます。

よくある質問

国民年金保険料が払えないとき、放置するとどうなりますか?

未納のままにすると、督促や延滞金、財産差押えの対象になり得るほか、その期間は将来の老齢基礎年金に反映されず、障害年金・遺族年金を受けられなくなる恐れがあります。払えないときは未納にせず、免除または納付猶予を申請してください。

全額免除になる所得の目安はいくらですか?

前年所得が「(扶養親族等の数+1)× 35万円 + 32万円」の範囲内なら全額免除の対象です。扶養親族のいない単身の場合は67万円が目安になります。所得は売上ではなく、経費や青色申告特別控除を差し引いた後の金額です。

免除と納付猶予はどちらが有利ですか?

免除は将来の年金額に一部反映されるのに対し、納付猶予は年金額には反映されません(受給資格期間にはカウント)。その意味では免除が有利ですが、納付猶予は世帯主の所得を判定に含めないため、親と同居していて免除に通らない50歳未満の方には現実的な選択肢になります。

免除を受けた期間は、あとから納められますか?

はい。承認された月から10年以内であれば追納でき、将来の年金額を満額に近づけられます。追納した保険料は社会保険料控除として所得控除の対象になります。ただし承認の翌年度から3年度目以降は加算額が上乗せされることがあります。