個人事業税とは
確定申告を終えてしばらくたった8月ごろ、都道府県から「個人事業税」の納税通知書が届いて驚く人がいます。所得税・住民税・国民健康保険とは別の地方税で、給与天引きもされないため、存在を知らないと予想外の出費になりがちです。この記事では、誰にいくらかかるのか、業種別の税率、納付の時期、そして所得税の確定申告とどう違うのかを、計算例つきで整理します。
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個人事業税は「事業主控除290万円」を超えた所得にかかる
個人事業税には、誰でも一律に差し引ける事業主控除(年290万円)があります。1年間営業した場合の控除額が290万円で、年の途中で開業・廃業して営業期間が1年未満のときは月割りになります。つまり、控除や繰越を差し引いた後の事業の所得が290万円以下であれば、個人事業税はかかりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 法律で定められた業種(法定業種)を営む個人 |
| 事業主控除 | 年290万円(営業期間が1年未満なら月割り) |
| 税率 | 業種により 3% / 4% / 5% |
| 納期 | 原則 第1期 8月末・第2期 11月末の年2回 |
| 課税のもと | 前年(1〜12月)の事業所得・不動産所得 |
業種で税率が変わる(3〜5%)
個人事業税は、法律で定められた法定業種(現在70業種)にあてはまる事業にかかります。税率は業種の区分によって決まります。
| 区分 | 税率 | 主な業種の例 |
|---|---|---|
| 第1種事業(37業種) | 5% | 物品販売業・製造業・飲食店業・請負業・出版業・運送業・デザイン業など |
| 第2種事業(3業種) | 4% | 畜産業・水産業・薪炭製造業 |
| 第3種事業(30業種) | 5% | 医業・弁護士・税理士・コンサルタント業・理容業・美容業など |
| 第3種のうち一部 | 3% | あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復など、装蹄師業 |
税額の計算式と計算例
個人事業税の税額は、前年の事業所得(不動産所得がある場合は合算)から各種控除と事業主控除290万円を引いた金額に、業種の税率をかけて求めます。式にすると次のとおりです。
(事業所得 + 青色申告特別控除額 − 各種控除 − 事業主控除290万円)× 税率 = 個人事業税額
計算例1: 第1種事業(税率5%)で事業所得500万円のケース
- 課税のもと: 500万円 − 290万円(事業主控除) = 210万円
- 個人事業税額: 210万円 × 5% = 105,000円
- ※年2回(8月・11月)に分けて納めます
計算例2: 第1種事業(税率5%)で事業所得350万円のケース
- 課税のもと: 350万円 − 290万円 = 60万円
- 個人事業税額: 60万円 × 5% = 30,000円
計算例3: 事業所得が290万円以下のケース
- 事業主控除290万円を引くとゼロ以下になるため、個人事業税は0円
- ただし青色申告特別控除を足し戻すと290万円を超える場合は課税対象になり得ます(上の注意点を参照)
ここでいう事業所得は、売上から経費を引いた金額(青色申告特別控除を足し戻した額)です。経費の計上漏れがあると所得が大きくなり、個人事業税・住民税・国保のすべてが上振れします。何が経費になるかはフリーランスの経費一覧チェックリストで確認できます。
青色申告特別控除は個人事業税を下げない(でも所得税・住民税・国保は下げる)
個人事業税で見落とされやすいのが、青色申告特別控除(最大65万円)を引いても個人事業税は1円も安くならないという点です。東京都主税局も「個人の事業税には青色申告特別控除の適用はありませんので、所得金額に加算します」と明記しています。一方で、同じ65万円は所得税・住民税・国民健康保険料の計算ではしっかり効きます。同じ儲けでも、複式簿記で65万円控除を取っているかどうかで負担は次のように変わります。
| 項目 | 白色(控除なし) | 青色申告特別控除65万円 |
|---|---|---|
| 個人事業税の課税標準 | 365万 − 290万 = 75万円 | (300万 + 65万足し戻し) − 290万 = 75万円 |
| 個人事業税 | 37,500円 | 37,500円(変わらない) |
| 所得税・住民税のもとになる所得 | 365万円 | 300万円(65万円小さい) |
| 所得税+住民税の目安差 | — | 約13万円軽くなる(合計税率20%と仮定) |
| 国保の所得割の目安差 | — | 約6.9万円軽くなる |
納付の時期と方法
個人事業税は確定申告の数か月後にあたる8月ごろに納税通知書が届き、原則として第1期(8月末)・第2期(11月末)の年2回に分けて納めます(納期は都道府県により異なる場合があります)。税額が少額のときは1回にまとめられることもあります。支払いは金融機関・コンビニのほか、都道府県によっては口座振替やスマホ決済・クレジットカードにも対応しています。
確定申告をしていれば、原則として別の申告は不要
個人事業税のためにあらためて申告書を出す必要は、原則としてありません。所得税の確定申告または住民税の申告をしていれば、その内容が都道府県に共有され、自動的に税額が計算されて通知されます。ただし、年の途中で事業を廃止した場合は別に申告が必要になることがあります。廃業の手続きは廃業届の書き方と出すタイミングも参考にしてください。
個人事業税で確認したいチェックリスト
- 前年の事業所得(青色申告特別控除を足し戻した額)が290万円を超えているか
- 自分の事業が法定業種にあてはまるか・税率は何%か
- 通知書の課税標準が、確定申告で申告した所得と整合しているか
- 青色申告特別控除が足し戻されている前提で税額を見積もれているか
- 8月末・11月末の納期を把握し、納税分を別に取り分けているか
- 前年に支払った個人事業税を、今年の確定申告で租税公課として経費計上したか
住民税・国保とあわせて「翌年の負担」に備える
個人事業税・住民税・国民健康保険は、いずれも前年の所得をもとに翌年かかる点が共通します。稼げた年の翌年に、これらが重なって資金繰りが苦しくなりやすいのが個人事業主の悩みどころです。6月の住民税・国保の通知については住民税・国保の通知が届いたらで、所得が大きくなってきた場合の選択肢は法人化を考える売上の目安で整理しています。
来年の負担を見越すには、手取り計算ツールで個人事業税まで含めた年間の負担を見積もり、税金分を別口座に取り分けておくと安心です。日々の取引を正しく記帳して所得を適正に申告することが、結果的に過大な課税を防ぐことにつながります。
よくある質問
個人事業税はいくらから、いつかかりますか?
事業主控除(年290万円)を引いた後の事業所得が残る人にかかります。前年の所得をもとに計算され、原則として8月ごろに納税通知書が届き、第1期(8月末)・第2期(11月末)の年2回で納めます。所得が290万円以下なら原則かかりません。
所得税ではほぼゼロなのに個人事業税の通知が来たのはなぜですか?
個人事業税では青色申告特別控除(最大65万円)が使えないためです。所得税の計算では65万円を引いて所得がゼロ近くでも、個人事業税ではその65万円を足し戻して計算するため、足し戻し後の所得が290万円を超えると課税されます。
個人事業税の税率は何%ですか?
業種によって異なり、法定業種は第1種(37業種)が5%、第2種(3業種)が4%、第3種(30業種)が原則5%です。第3種のうち、あんま・マッサージ・はり・きゅう・柔道整復など一部と装蹄師業は3%です。自分の事業の区分は都道府県税事務所で確認できます。
ライターやエンジニアにも個人事業税はかかりますか?
文筆業(作家・ライター)など法定業種に含まれない事業は非課税になることがあります。一方、仕事の実態が請負業やコンサルタント業とみなされると課税される場合もあり、判断は都道府県が実態に基づいて行います。迷う場合は都道府県税事務所に確認するのが確実です。
青色申告にすると個人事業税は安くなりますか?
個人事業税自体は安くなりません。個人事業税の計算では青色申告特別控除(最大65万円)が使えず、所得に足し戻して計算するためです(東京都主税局)。ただし同じ65万円は所得税・住民税・国民健康保険料の計算では控除されるため、これらの負担を下げる効果はあります。個人事業税だけを見て青色申告の損得を判断しないようにしましょう。
個人事業税のために別途申告は必要ですか?
所得税の確定申告または住民税の申告をしていれば、原則として個人事業税のための別の申告は不要です。その内容から都道府県が税額を計算して通知します。ただし年の途中で事業を廃止した場合などは、別に申告が必要になることがあります。