会計ソフトは年の途中から使い始められる?初めて導入する手順と開始残高の設定

「確定申告が近いけれど、会計ソフトをまだ入れていない」「年の途中で開業したが、今から始めても間に合う?」——結論から言うと、会計ソフト(クラウド会計・確定申告ソフト)は年の途中からでも使い始められます。ポイントは、導入した月からではなく、その年の1月1日(開業した年なら開業日)にさかのぼって記帳することです。この記事では、初めて会計ソフトを導入する人向けに、さかのぼり入力の手順・開始残高の設定・つまずきやすい点を、国税庁の情報にそって整理します。

この記事は、手書き・エクセル・未記帳の状態から初めて会計ソフトを導入する人向けです。すでに別の会計ソフトを使っていて乗り換える場合は会計ソフトの乗り換え方(データ移行の手順)を参照してください。そもそも自分に会計ソフトが必要かを先に確かめたい方は会計ソフト導入診断(8問)で判定できます。

年の途中からでも始められる(結論)

会計ソフトの導入に「この日までに始めないとダメ」という締め切りはありません。7月でも11月でも、思い立った時点から使い始められます。ただし確定申告、とくに青色申告特別控除(65万円・55万円)を狙うなら、その年の1月1日から12月31日までの1年分の取引を複式簿記で記録し、貸借対照表と損益計算書を作成する必要があります(国税庁 No.2072)。導入した月以降だけを入力しても1年分の帳簿にはならないため、さかのぼって1年分を入れるのが基本になります。

青色申告をする人には、取引を正規の簿記の原則(複式簿記)にしたがって記帳し、帳簿書類を原則7年間保存する義務があります(国税庁 No.2070)。白色申告でも、収入金額や必要経費を記載した帳簿の記帳・保存は必要です(国税庁 No.2080)。「会計ソフトを入れたのが年の後半だから前半は記帳しなくてよい」わけではない点に注意しましょう。

いつ始めるとラク?タイミング別の手間

会計ソフトを導入するタイミングと手間の目安
導入タイミング手間ポイント
開業と同時◎ 最小取引が発生した初日から記帳できるので、さかのぼり入力がほぼ不要。開業届・青色申告承認申請と合わせて準備するのが理想
年初(1月)○ 少ない期首(1月1日)から順に入れていけばよく、開始残高の設定も明快
年の途中(数か月経過後)△ ややあり1月1日にさかのぼって入力する。銀行・カード連携で過去明細をまとめて取り込めば負担を減らせる
確定申告の直前(1〜3月)▲ 多い前年1年分をまとめて入力することになる。件数が多いと時間がかかるため、早めの着手が安全

どのタイミングでも申告自体は可能ですが、取引件数が多い人ほど早く始めるほど1回あたりの入力が軽くなります。「あとでまとめて」は件数がたまって挫折しやすいので、思い立った日にさかのぼり入力を始めるのがおすすめです。

年の途中から始める2つのやり方

方法A:1月1日にさかのぼって全部入力する(推奨)

その年の1月1日から今日までの取引をすべて入力する方法です。手間はかかりますが、1年分の帳簿がソフトの中で完成するため、青色申告特別控除に必要な複式簿記の帳簿・貸借対照表・損益計算書がそのまま作れます。銀行口座やクレジットカードをソフトに連携すれば、過去の明細をまとめて取り込めるので、想像より早く終わることが多いです。

  • 事業用の銀行口座・クレジットカードを連携して、年初からの明細を自動取得する
  • 取得した明細の勘定科目を1件ずつ確認する(ソフトが取引内容から科目を自動提案してくれます)
  • 現金でのやり取り(連携に乗らない取引)は、レシート・領収書を見ながら手入力する
  • 売掛金・買掛金がある場合は、入金・支払のタイミングと売上・仕入の計上時期のズレを確認する

方法B:導入日から入力し、期首の開始残高を設定する

「今日以降の取引だけ入力し、それ以前は開始残高としてまとめて設定する」方法です。日々の入力は軽くなりますが、導入日時点の預金・売掛金・借入金などの残高を正確に把握する必要があり、期首(1月1日)からの取引を複式簿記で連続して記録したことにはなりにくい点に注意が必要です。青色申告65万円控除を確実に受けたい場合は、手間でも方法A(1月1日からのさかのぼり入力)が無難です。

開始残高(元入金)の設定

1月1日にさかのぼって入力する場合でも、事業を前年から続けている人は、期首(1月1日)時点の資産・負債の残高=開始残高を設定します。個人事業では、期首の資産合計から負債合計を引いた差額を「元入金」として登録します(法人でいう資本金にあたる、事業の元手です)。

【資産】 現金 30,000円 事業用普通預金 400,000円 売掛金 200,000円 【負債】 買掛金 50,000円 未払金 20,000円 元入金 = 資産合計630,000円 − 負債合計70,000円 = 560,000円

この例では元入金は56万円です。開業したばかりで前年からの繰り越しがない人(その年に開業)は、開始残高の設定はほぼ不要で、開業日以降の取引を順に入力すれば大丈夫です。開始残高の入力欄はソフトごとに用意されているので、通帳残高・売掛金の一覧などを手元に用意して登録します。

銀行・カード連携でさかのぼり入力を短くする

さかのぼり入力の負担を大きく左右するのが、銀行口座・クレジットカードの自動連携です。連携すると過去の明細を自動で取り込めるため、通帳やレシートを1件ずつ入力する手間を減らせます。取得できる過去分の期間は金融機関やサービスによって異なるため、連携の範囲や対応口座は導入前に確認しておくと安心です。主要ソフトの連携範囲や料金プランはクラウド会計ソフト3社の比較で見比べられます。

連携で取り込んだ明細は、そのまま鵜呑みにせず勘定科目が事業内容に合っているかを確認します。プライベートの支出が混ざっている場合は事業分だけを経費にし、私的利用と兼用のものは家事按分で事業割合を計上します。会計ソフト自体の利用料も経費にできます(勘定科目の考え方は会計ソフト代の勘定科目と仕訳を参照)。

開業した年に会計ソフトを入れるなら

その年に開業した人が青色申告をするには、原則として開業日から2か月以内(1月1日〜15日開業などは3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出しておく必要があります(国税庁 No.2070)。会計ソフトの導入と合わせて、この申請の期限も確認しておきましょう。申請書の書き方は青色申告承認申請書の書き方と提出期限にまとめています。

開業前に支払った準備費用(名刺・ホームページ制作費・調査費など)は「開業費」として、開業日以降に経費化できる場合があります。会計ソフトにさかのぼって入力する際に拾い漏れないよう、開業前の領収書も手元に集めておくとよいでしょう。

導入前チェックリスト

  • その年(または開業日)以降の取引を、1月1日までさかのぼって入力する方針を決めた
  • 事業用の銀行口座・クレジットカードを連携し、過去明細を取り込む準備をした
  • 現金取引のレシート・領収書を年初分から集めた
  • 前年から事業を続けている場合、期首の預金・売掛金・買掛金などの残高(元入金)を把握した
  • 青色申告を狙うなら、複式簿記で貸借対照表・損益計算書まで作れる設定になっているか確認した
  • その年に開業した場合、青色申告承認申請書の提出期限(開業から2か月以内)を確認した

会計ソフト導入診断(8問・無料)自分に会計ソフトが必要か、青色65万円控除を狙うべきかを8つの質問で判定します

会計ソフトは年の途中からでも問題なく始められます。大切なのは「導入した月から」ではなく「その年の1月1日から」1年分の帳簿をそろえることです。さかのぼり入力は銀行・カード連携でぐっと軽くなるので、まずは自分の申告スタイル(青色65万円控除を狙うか、白色で始めるか)に合うソフトを主要クラウド会計ソフトの比較で選び、思い立った日から記帳を始めましょう。日々の記帳の進め方は帳簿の付け方で解説しています。

よくある質問

会計ソフトは年の途中から使い始めても確定申告に間に合いますか?

間に合います。導入した月からではなく、その年の1月1日(その年に開業した場合は開業日)にさかのぼって取引を入力すれば、1年分の帳簿を作れます。銀行口座やクレジットカードを連携すると過去の明細をまとめて取り込めるため、後半に始めても入力の負担を抑えられます。

導入した月より前の取引も入力しないといけませんか?

青色申告特別控除(65万円・55万円)を受けるには、その年の1月1日から12月31日までの取引を複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を作る必要があります(国税庁 No.2072)。白色申告でも記帳・帳簿保存は必要です(No.2080)。そのため、導入前の月の取引もさかのぼって入力するのが基本です。

開始残高(元入金)とは何ですか?どう決めますか?

前年から事業を続けている人が期首(1月1日)時点で持っている資産(現金・預金・売掛金など)から負債(買掛金・借入金など)を引いた差額が「元入金」で、事業の元手にあたります。通帳残高や売掛金の一覧をもとに、期首の各残高を会計ソフトの開始残高欄に登録します。その年に開業した人は、開始残高の設定はほとんど不要です。

さかのぼり入力を楽にする方法はありますか?

事業用の銀行口座・クレジットカードをソフトに連携すると、過去の明細を自動で取り込めるため、1件ずつ手入力する手間を大きく減らせます。取得できる過去分の期間は金融機関やサービスによって異なるので、導入前に連携範囲を確認しておくと安心です。現金取引はレシート・領収書を見ながら手入力します。

その年に開業した場合、いつまでに何をすればいいですか?

青色申告をするなら、原則として開業日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出しておく必要があります(国税庁 No.2070)。会計ソフトは開業日以降の取引を順に入力していけばよく、開業前に支払った準備費用は開業費として計上できる場合があるため、領収書を集めておきましょう。