インボイス登録の取消し(やめたい場合)の手順と注意点

インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしたものの、取引先がインボイスを必要としなくなった、消費税の負担が重い、といった理由で登録をやめたいと考える人もいます。登録の取消しは届出書1枚で申し出ることができますが、「いつ提出したか」で登録が失効する時期が変わる点と、人によってはやめてもすぐ免税事業者には戻れない点に注意が必要です。この記事では、国税庁の公開情報をもとに取消しの手順と注意点を整理します。

登録をやめるには「取消しの届出書」を出す

インボイスの登録をやめたいときは、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します(国税庁の手続番号 D1-70)。登録をやめる手続きで、廃業や死亡とは関係なく登録だけを取り消したい場合に使います。

登録の取消しの基本情報(国税庁)
項目内容
提出する書類適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書
提出先納税地を所轄する税務署長
提出方法e-Tax、郵送、税務署へ持参
手数料無料
効力提出した時期に応じて、登録が将来の課税期間の初日に失効する
「廃業(事業をやめる)」場合は手続きが別になり、原則として「事業廃止届出書(消費税)」を提出します。事業は続けるがインボイス登録だけをやめたい、というときに使うのがこの取消しの届出書です。廃業そのものの手続きは廃業届の書き方を参照してください。

提出期限は「翌課税期間の初日から起算して15日前の日」まで

取消しの届出書は、「やめたい課税期間の前の課税期間」のうちに、期限を意識して出す必要があります。提出が遅れると、登録が失効する時期が1年ずれることがあります。個人事業主の課税期間は原則として暦年(1/1〜12/31)です。

提出時期と登録が効力を失う日(国税庁)
提出した時期登録の効力を失う日
翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出その翌課税期間の初日に失効
15日前の日を過ぎて提出翌々課税期間の初日に失効(さらに1課税期間ずれる)
個人事業主(課税期間が暦年)の例: 2027年1月1日から登録をやめたいなら、2026年12月17日(翌課税期間の初日=1/1から起算して15日前の日)までに提出します。これを過ぎると、失効は2028年1月1日まで延びます。

なお、登録が失効する前に発行したインボイスは有効です。失効日以降は適格請求書を発行できず、登録番号も使えなくなります。失効のタイミングは取引先にも影響するため、請求書の様式変更とあわせて事前に伝えておくと親切です。

やめても「免税事業者に戻れない」場合がある(2年縛り)

ここが一番の落とし穴です。インボイス登録を取り消す=すぐに消費税を納めなくてよくなる、とは限りません。とくに、もともと免税事業者だった人がインボイス登録のために課税事業者になったケースでは、一定期間は登録をやめても免税事業者に戻れない決まりがあります。

  • 登録に係る経過措置で登録した場合(令和5年10月1日を含む課税期間中に登録した場合を除く)は、登録開始日以後2年を経過する日の属する課税期間まで、登録を取りやめても免税事業者にはなれず、消費税の申告・納税が続きます(いわゆる「2年縛り」)。
  • 「消費税課税事業者選択届出書」を出して課税事業者になっていた人が免税事業者に戻るには、取消しとは別に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を、戻りたい課税期間の初日の前日までに提出する必要があります。
  • どちらにも当てはまらず、もともと基準期間の課税売上高が1,000万円超で課税事業者だった人は、登録をやめても課税事業者である点は変わりません(仕入税額控除を受けられる取引先向けの請求ができなくなるだけ)。
「2年縛り」の起算や、自分が課税事業者選択届出書を出しているかどうかは、登録した時期や経緯によって変わります。判断を誤ると意図せず納税義務が残るため、迷う場合は税務署や税理士に確認してください。本記事は2026年6月時点の国税庁の公開情報をもとにした一般的な解説です。

取消し前に確認するチェックリスト

  • 取引先がインボイスを必要としていないかを確認した(必要な取引先がいると、値引き交渉や取引見直しにつながることがある)
  • いつから登録をやめたいかを決め、その課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出できるか確認した
  • 経過措置で登録したか課税事業者選択届出書を出しているかを確認し、「2年縛り」や免税に戻る条件に当てはまるか整理した
  • 免税に戻れる場合、必要なら課税事業者選択不適用届出書もあわせて準備した
  • 失効後の請求書の様式(登録番号を外す)を準備し、取引先に伝える段取りをした
  • 2割特例や本則・簡易課税など、やめる前後でどちらが有利かを試算した

登録を続けるか・やめるかは、取引先の構成と自分の消費税負担のバランスで決まります。そもそも課税事業者になるべきかの考え方は課税・免税の判定フローで、登録を続ける場合の請求書の書き方はインボイスの記載要件で整理しています。納める消費税の概算は消費税の計算ツールで確認できます。

よくある質問

インボイスの登録をやめるにはどうすればいいですか?

納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出します。e-Tax・郵送・持参のいずれでも提出でき、手数料はかかりません。廃業ではなく登録だけをやめる場合の手続きです。

いつまでに出せば、希望する時期から登録をやめられますか?

やめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに取消しの届出書を提出すると、その課税期間の初日に登録が失効します。この日を過ぎて提出した場合は、失効がさらに1課税期間ずれ、翌々課税期間の初日に失効します。

登録をやめれば、すぐに消費税を納めなくてよくなりますか?

必ずしもそうではありません。経過措置で登録した場合(令和5年10月1日を含む課税期間中の登録を除く)は、登録開始日以後2年を経過する日の属する課税期間まで、登録をやめても免税事業者になれず申告が続きます。また課税事業者選択届出書を出していた人は、別途「課税事業者選択不適用届出書」の提出も必要です。

取消し前に発行したインボイスは無効になりますか?

無効にはなりません。登録が効力を失う前に発行した適格請求書は有効です。失効日以降は適格請求書を発行できず、登録番号も使えなくなります。